私たちは以前、トランスゴルジネットワーク(TGN)から細胞膜への構成性分泌を仲介する新規輸送小胞としてCARTSを同定した。特定の被覆構造を持たないCARTSの形成には、コレステロールとスフィンゴミエリンに富む脂質ナノドメインの形成とそれを足場とした機能分子のリクルートが重要であると考えられるが、その詳細な分子メカニズムはほとんどわかっていない。これまでに私たちは、オルガネラ膜接触を介した小胞体からゴルジ体へのコレステロールとセラミドの輸送がCARTS形成に必要であることを報告した。本研究では、小胞体-ゴルジ体接触部位のコレステロール輸送複合体との相互作用が見出されたSCAPに着目して機能解析を行った。その結果、SCAPは小胞体のコレステロールレベル依存的に膜接触部位を介して、TGNからのCARTS形成及びタンパク質分泌を促進することが示唆された。 小胞体膜接触は、ミトコンドリアやエンドソームの膜切断位置の決定に重要であることが明らかになっている。TGNにおいても、輸送小胞の形成が繰り返し起こるホットスポットの存在が以前から報告されているが、その位置や輸送小胞形成のタイミングを何が決定しているのかは、これまで明らかになっていない。私たちは、今回BiFC法を利用して小胞体-ゴルジ体接触部位を可視化することで、CARTS形成サイトが膜接触部位に非常に近接していることを示した。このことは、CARTS形成の最終段階としておこるTGN膜の切断にも小胞体膜接触が重要である可能性を示唆している。また、今回私たちは、CARTS積み荷分泌タンパク質の選別シグナルの解析を行い、重要なアミノ酸配列の特定に至った。今後その領域を介した結合パートナーの同定を目指す。この研究は、これまで明らかになっていないTGNにおける可溶性分泌タンパク質の選別機構の解明につながることが多いに期待される。
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