研究実績の概要 |
硫酸化糖鎖は発生過程や成熟後の細胞機能の制御や恒常性の維持において多彩な機能を発揮する重要な分子であり, 硫酸化糖鎖の機能はその構造多様性を基盤とする.発生プログラムの制御下あるいは環境からの刺激を受け,その時・その場に適した糖鎖構造が合成され細胞機能が制御されると考えられているが, 状況に応じて糖鎖構造が制御される仕組みの詳細は不明である. また, このような生合成制御機構の破綻は細胞機能の異常を引き起こし, 種々の疾患と関連することが予想される. 本研究では以下の3点を明らかにする. ①細胞内外の状況(特に糖鎖の合成状況)を反映し, 場面に応じた糖鎖構造を合成する制御機構の存在を明らかにする ②糖鎖合成制御機構の生理的意義を示す. ③糖鎖構造の合成制御機構を作動させる低分子化合物の探索を行う. 本年度は、糖鎖生合成の破綻を起こした状況を模擬するために、幾つかの硫酸化糖鎖生合成酵素遺伝子のノックアウト細胞をゲノム編集により作出し、その解析を行った。計画していた硫酸化糖鎖生合成酵素遺伝子を欠損させたノックアウト細胞株の作成はほぼ終了した。作成したノックアウト細胞の硫酸化糖鎖生合成酵素遺伝子群の発現レベル、及びこれらが合成する糖鎖を解析した。硫酸化糖鎖の修飾が阻害されている細胞、あるいは特殊な糖鎖構造の発現が変化している細胞を作出できたことが確認された。また、プロテオグリカンの合成が活発に行なわれる時、合成されるコアタンパク質に対してゴルジ体の糖鎖修飾能が不足すると考えられ、このような状況を打破するために糖鎖合成酵素遺伝子の発現を誘導するシステムが備わっているという考えられる。この仮説を証明するために、Tet-on システムによりコアタンパク質の発現を薬物で誘導できる細胞を作出した。
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