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2018 年度 実施状況報告書

硫酸化糖鎖の合成制御機構の解明と制御機構を利用した細胞機能の制御

研究課題

研究課題/領域番号 17K07353
研究機関神戸薬科大学

研究代表者

灘中 里美  神戸薬科大学, 薬学部, 准教授 (60378578)

研究期間 (年度) 2017-04-01 – 2020-03-31
キーワードグリコサミノグリカン / コンドロイチン硫酸 / ヘパラン硫酸 / プロテオグリカン
研究実績の概要

硫酸化糖鎖は発生過程や成熟後の細胞機能の制御や恒常性の維持において多彩な機能を発揮する重要な分子であり, 硫酸化糖鎖の機能はその構造多様性を基盤とする.発生プログラムの制御下あるいは環境からの刺激を受け,その時・その場に適した糖鎖構造が合成され細胞機能が制御されると考えられているが, 状況に応じて糖鎖構造が制御される仕組みの詳細は不明である. また, このような生合成制御機構の破綻は細胞機能の異常を引き起こし, 種々の疾患と関連することが予想される. 本研究では以下の2点を明らかにした.
①細胞内外の状況(特に糖鎖の合成状況)を反映し, 場面に応じた糖鎖構造を合成する制御機構の存在を明らかにするとともに, 糖鎖合成制御機構の生理的意義を示す.
プロテオグリカンの合成が活発になるほどゴルジ体ストレス応答は活性化した. また, 神経新生の時期にゴルジ体ストレス応答が活性化し, ゴルジ体ストレス応答の鍵転写因子をノックダウンすると神経新生が遅延することがわかった.
ある硫酸化糖鎖合成酵素遺伝子をノックアウトした細胞では, 別の合成酵素遺伝子の発現が特異的かつ顕著に変化していた(糖鎖合成状況に応答した糖鎖合成遺伝子の発現調節機構の存在).
②糖鎖構造の合成制御機構を作動させる低分子化合物の探索を行う.
糖鎖合成制御機構を動かす候補転写因子を活性化する化合物をスクリーニングし, この化合物が神経幹細胞から神経細胞への分化を促進することを明らかにした. また, 神経再生時に軸索伸長のバリアとなる硫酸化糖鎖の合成において重要な役割を果たす鍵酵素の発現を抑制する化合物を見出した. 軸索伸長のバリアとなる硫酸化糖鎖は主にアストロサイトで合成されるが, 化合物でアストロサイトを処理すると, 軸索伸長阻害活性が低い硫酸化糖鎖を合成するようになった.

現在までの達成度 (区分)
現在までの達成度 (区分)

2: おおむね順調に進展している

理由

①細胞内外の状況(特に糖鎖の合成状況)を反映し, 場面に応じた糖鎖構造を合成する制御機構の存在を明らかにするとともに, 糖鎖合成制御機構の生理的意義を示すこと, ②糖鎖構造の合成制御機構を作動させる低分子化合物の探索を行うために, 予定していた実験はほぼ終了し, ポジティブな結果が得られた. 論文として発表するための前段階まで到達したと考えられるため, おおむね順調に進展していると判断した。

今後の研究の推進方策

糖鎖合成状況に応答して変化する糖鎖合成遺伝子を見つけたが、この発現調節機構の解析はできていない. また, 今回明らかになった発現調節機構が作動した結果, 細胞機能は変化していたが, 合成された硫酸化糖鎖の構造を機能を相関させることができていない. 今後はこの2つの点について明らかにしていく予定である.

次年度使用額が生じた理由

研究は論文発表の段階に到達している。したがって、次年度使用額は、論文のリバイズのための消耗品の購入、論文投稿料などに使用予定である。

  • 研究成果

    (7件)

すべて 2018 その他

すべて 雑誌論文 (4件) (うち査読あり 4件) 学会発表 (2件) (うち招待講演 1件) 備考 (1件)

  • [雑誌論文] Increased synthesis of chondroitin sulfate proteoglycan promotes adult hippocampal neurogenesis in response to enriched environment.2018

    • 著者名/発表者名
      Yamada, J., Nadanaka, S., Kitagawa, H., Takeuchi, K., and Jinno, S.
    • 雑誌名

      J. Neurosci.

      巻: 38 ページ: 8496-8513

    • DOI

      doi.org/10.1523/JNEUROSCI.0632-18.2018

    • 査読あり
  • [雑誌論文] Structural variation of chondroitin sulfate chains contributes to molecular heterogeneity of perineuronal nets.2018

    • 著者名/発表者名
      Miyata, S., Nadanaka, S., Igarashi, M., and Kitagawa, H. (2018) Structural variation of chondroitin sulfate chains contributes to molecular heterogeneity of perineuronal nets.
    • 雑誌名

      Front. Integr. Neurosci.

      巻: 12 ページ: 3

    • DOI

      doi: 10.3389/fnint.2018.00003

    • 査読あり
  • [雑誌論文] Exostosin-like 2 regulates FGF2 signaling by controlling the endocytosis of FGF2.2018

    • 著者名/発表者名
      Nadanaka, S. and Kitagawa, H.
    • 雑誌名

      Biocim. Biophys. Acta

      巻: 1862 ページ: 791-799

    • DOI

      doi:10.1016/j.bbagen.2018.01.002

    • 査読あり
  • [雑誌論文] Chondroitin sulfates-mediated N-cadherin/β-catenin signaling associated with basal-like breast cancer cell invasion.2018

    • 著者名/発表者名
      Nadanaka, S., Kinouchi, H., and Kitagawa, H.
    • 雑誌名

      J. Biol. Chem.

      巻: 293 ページ: 444-465

    • DOI

      doi:10.1074/jbc.M117.814509

    • 査読あり
  • [学会発表] EXT-like 2 によるエンドサイトーシスを介した FGF2 シグナルの制御機構2018

    • 著者名/発表者名
      灘中 里美, 北川 裕之
    • 学会等名
      糖質学会年会(仙台)
  • [学会発表] 時間軸に沿って変化する糖鎖の生物学的な意義2018

    • 著者名/発表者名
      灘中 里美, 北川 裕之
    • 学会等名
      第91回生化学会大会
    • 招待講演
  • [備考] 神戸薬科大学 生化学研究室

    • URL

      https://www.kobepharma-u.ac.jp/edrs/faculty_member_list/biochemistry.html

URL: 

公開日: 2019-12-27  

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