研究課題
本課題では、オリゴデンドロサイト前駆細胞(OPCs)のオリゴデンドロサイトへの分化・成熟およびミエリン鞘形成を調節するメカニズムとして、コンドロイチン硫酸(CS)糖鎖に着目した研究を行った。PTPRZは、OPCsに発現し、その細胞外領域がCS糖鎖によって修飾されているユニークな受容体型タンパク質チロシン脱リン酸化酵素(RPTP)である。我々はこれまでに、OPCsの分化および(再)ミエリン化がPTPRZによって抑制されていること、PTPRZの細胞外CS糖鎖はそのPTPase活性の維持に関わっていること、また、プロタミンと呼ばれるペプチド分子がPTPRZの細胞外CS糖鎖に作用してPTPRZの会合を促進し、その酵素活性を抑制し、OPCsの分化を促進することなどを見出してきた。昨年度には、PTPRZの新たな基質分子としてAFAP1L2を見出し、プレイオトロフィン(PTN)などのリガンド分子がPTPRZのPTPase活性を抑制することによって、AFAP1L2のリン酸化レベルが上昇し、その下流シグナルであるPI3キナーゼの活性化を介したAKTおよびmTORの活性化によって、OPCsの分化が調節されていることも明らかにしてきた。当該年度は、PTPRZの細胞外CS糖鎖の機能的役割および、会合したPTPRZのPTPase抑制機構の解析を行った。その結果、CS糖鎖を含有するPTPRZ細胞外ドメインは薬物依存の形成に関与することが明らかとなった(PloS one 14: e0217880, 2019)。また、PTNなどによる細胞外CS糖鎖の抑制を介したPTPRZの会合時における酵素の不活性化機構として、head-to-toe dimerizationモデルの提唱を行った(JBC 294: 14953-14965, 2019)。
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すべて 雑誌論文 (2件) (うち査読あり 2件、 オープンアクセス 1件) 学会発表 (5件)
PLOS ONE
巻: 14 ページ: e0217880
https://doi.org/10.1371/journal.pone.0217880
The Journal of Biological Chemistry
巻: 294 ページ: 14953-14965
https://doi.org/10.1074/jbc.RA119.007878