研究課題/領域番号 |
17K07356
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研究機関 | 岐阜大学 |
研究代表者 |
木塚 康彦 岐阜大学, 研究推進・社会連携機構, 准教授 (20564743)
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研究期間 (年度) |
2017-04-01 – 2020-03-31
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キーワード | 糖鎖生物学 |
研究実績の概要 |
本研究は、神経系の糖鎖の発現とメカニズムを明らかにする研究である。特に、アルツハイマー病発症を促進させることが見出された「バイセクト糖鎖」に着目し、いまだ不明であるバイセクト糖鎖の生理的・病的発現メカニズムと作用原理を明らかにする。具体的には、本糖鎖がどのように限られたタンパク質に発現するのか、そしてその発現が疾患でどのように破綻するのか、さらに本糖鎖が物理的にどう働いているのか、という未解決の基本的な問に対する答えを探す。これにより、アルツハイマー病の病態形成メカニズムの解明や新規治療薬の開発への寄与を目指す。 平成29年度は、糖鎖の発現や機能の解析に資する新しい化合物として、6-アルキニルフコースと呼ばれる糖のアナログが、フコシル化糖鎖の合成阻害剤として働き、細胞の機能を調節できることを明らかにした(Kizuka et al., Cell Chem. Biol.)。また、EC-SODと呼ばれる様々な疾患に関わる糖タンパク質の機能が、糖鎖構造によって厳密に制御されていることを見出し (Ota et al., Glycobiology)、疾患と糖鎖に関する新たな知見が得られた。さらに、炎症などに深く関わるLangerinと呼ばれるC型レクチン分子と強く結合する糖鎖リガンドを新たに合成した(Ota et al., Biochim. Biophys. Acta.)。それにより、COPDを初めとする炎症性疾患に糖鎖の観点から治療効果が期待できることがわかった。さらに、現在バイセクト糖鎖とアルツハイマー病に関する総説論文を執筆している。またバイセクト糖鎖が他の糖鎖の発現を調節する新しいメカニズムを解明しつつある。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
1: 当初の計画以上に進展している
理由
平成29年度は、6-アルキニルフコースと呼ばれる糖のアナログが、フコシル化糖鎖の合成阻害剤として働き、細胞の機能を調節できることを明らかにし、Cell Chem. Biol.誌に筆頭著者として論文を発表した。また、EC-SODと呼ばれる様々な疾患に関わる糖タンパク質の機能が、糖鎖構造によって厳密に制御されていることについては、Glycobiology誌に責任著者として論文を発表した。さらに、炎症などに深く関わるLangerinと呼ばれるC型レクチン分子と強く結合する糖鎖リガンドを新たに合成したことに関して、Biochim. Biophys. Acta.誌に責任著者として論文を発表した。さらに現在、バイセクト糖鎖の機能に関して新しい知見が得られ、総説論文も執筆しており、十分な成果が得られている。
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今後の研究の推進方策 |
今後は、バイセクト糖鎖が他の糖鎖の発現を制御するメカニズムの詳細を明らかにする。またバイセクト糖鎖の合成阻害剤を開発し、アルツハイマー病の治療薬としての可能性を探る。バイセクト糖鎖の合成阻害の副作用を明らかにするため、バイセクト糖鎖欠損マウスの詳細なphenotype解析も行う。さらに、糖鎖の追跡に有用な新たなプローブ(糖アナログ)を開発する。
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次年度使用額が生じた理由 |
今年度は、概ね計画通りの予算支出となったが、約6万円弱の次年度使用額が生じた。これは、代表者の異動等に伴い、当初計画していた実験計画に若干の変更の必要性などが生じたためである。当該助成金は来年度の消耗品の購入費用に充当させる。異動後の研究環境はすでに整っており、また研究成果は順調に得られているため、大幅な研究計画や予算計画の変更は必要なと考えられる。
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