研究課題
本研究は、神経系の糖鎖の発現とメカニズムを明らかにする研究である。特に、アルツハイマー病を促進させることが見出された「バイセクト糖鎖」に着目し、いまだ不明であるバイセクト糖鎖の生理的・病的発現メカニズムと作用原理を明らかにする。具体的には、本糖鎖がどのように限られたタンパク質に発現するのか、そしてその発現が疾患でどのように破綻するのか、さらに本糖鎖が物理的にどう働いているのか、という未解決の基本的な問に対する答えを探す。これにより、アルツハイマー病の病態形成メカニズムの解明や新規治療薬の開発への寄与を目指す。令和1年度は、バイセクト糖鎖の合成酵素であるGnT-III(Mgat3)欠損マウスの脳における糖鎖解析を進め、GnT-IIIの欠損によって、シアル酸、ルイス型フコース、HNK-1などN型糖鎖の末端構造がおしなべて増加することを明らかにした。またその原因として、これら糖鎖末端構造を生合成する酵素が、共通して バイセクト型の糖鎖構造を基質として好まないことを見出した。このことは、バイセクト糖鎖が、N型糖鎖の末端修飾を一般に抑制するブレーキ役としての機能を有することを示している。以上の成果はMol. Cell. Proteomics誌に発表した。これら、GnT-IIIをはじめとするN型糖鎖の分岐形成酵素についての総説論文をInt. J. Mol. Sci.誌に発表した。また神経系の糖鎖の発現を負に制御する因子として、新たにアルギニンメチル化酵素1 (PRMT1)を同定し、PRMT1欠損マウスの脳でHNK-1糖鎖の発現が上昇していること、そのメカニズムとして、HNK-1合成酵素やHNK-1キャリアタンパク質のmRNA発現がKOマウスで増加していることなどを明らかにした。
すべて 2020 2019 その他
すべて 国際共同研究 (2件) 雑誌論文 (4件) (うち国際共著 1件、 査読あり 4件) 学会発表 (4件) (うち国際学会 3件) 備考 (2件)
Biochimica et Biophysica Acta (BBA) - General Subjects
巻: 1864 ページ: 129509~129509
10.1016/j.bbagen.2019.129509
International Journal of Molecular Sciences
巻: 21 ページ: 437~437
10.3390/ijms21020437
Molecular & Cellular Proteomics
巻: 18 ページ: 2044~2057
10.1074/mcp.RA119.001534
Trends in Glycoscience and Glycotechnology
巻: 31 ページ: SE89~SE90
10.4052/tigg.1942.2SE
https://www.gifu-u.ac.jp/about/publication/press/20190805.pdf
https://www1.gifu-u.ac.jp/~kizuka_2/