研究課題
哺乳動物細胞のスフィンゴ糖脂質の生合成酵素はほぼ同定されている。しかし細胞内輸送因子に関しては未解明な点があり、その中の1つとして、グルコシルセラミド (GlcCer) の脂質二重膜を横切る輸送(フリップフロップ機構)が挙げられる。GlcCerは合成酵素によって主にゴルジ体の細胞質側で生合成される。続いて生合成されるラクトシルセラミド (LacCer) の合成酵素はゴルジ体内腔側に活性部位を有しているため、GlcCerは細胞質側から内腔側へフロップする必要がある。本研究は、この未解明であるGlcCerのフロップ機構に関与する因子の同定を最終目標とする。そのための手段として、CRISPRライブラリー等を用いて糖脂質生合成に関与する因子をゲノムワイドスクリーニングで探索し、その中から目的遺伝子の同定を試みる。R2年度はVero細胞を用いたゲノムワイドスクリーニングで同定された遺伝子の1つに関してKO細胞及び発現復帰株をVero C1008細胞で作製し、(1) 志賀毒素に対する感受性解析、(2) 志賀毒素受容体Gb3を含めた糖脂質解析、(3) オルガネラへの影響、について検討した。その結果、(1) KO細胞は志賀毒素に耐性を示した。 (2) KO細胞はGb3及びそれ以降の糖脂質生合成が阻害され、代わりに前駆体であるラクトシルセラミド及びグルコシルセラミドの大幅な増加が見られた。
3: やや遅れている
本年度前半はCOVID-19対策によって通常の研究活動が抑制されたことにより、あまり研究の進展がなかったものの、後半はVero細胞を用いたスクリーニングで糖脂質生合成に影響を及ぼす新たな因子の同定に成功し、その機能解明を行うことが出来た。このことから、前半の遅れを取り戻しつつある。上記で示したように、同定した遺伝子の1つに関して、糖脂質生合成(Gb3生合成)に影響を及ぼしていること、ゴルジ体機能に影響を及ぼすことを明らかにした。
R3年度は、上記のVero細胞を用いたスクリーニングで得られた因子のさらなる解析を行い、特にゴルジ体を中心としたオルガネラへの影響、細胞内輸送を中心に検討する。それらの結果を踏まえて、Vero細胞を用いたスクリーニングに関して論文をまとめる。
COVID-19による研究の遅延により、次年度まで再延長することとし、使用する額を残した。R3年度は、通常の分子生物学的試薬、細胞培養試薬の他、その他の経費として論文投稿代を計画している。
すべて 2021 2020
すべて 雑誌論文 (9件) (うち国際共著 1件、 査読あり 6件、 オープンアクセス 4件) 学会発表 (8件) (うち国際学会 1件、 招待講演 2件)
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