平成31年度は、変異Pin1由来のプロテアーゼのミクロ化を行った。プロテアーゼはタンパク質サイズが小さければ小さいほど立体障害を軽減することができ、攻撃可能な標的が多くなることが期待できる。そこで、本研究で創製したプロテアーゼのサイズを小さくすべく、プロテアーゼ活性部位とは遠位にあるN端側のドメインの削除を行った。さらに、触媒部位およびその周辺残基に変異を導入し、8種類変異体を作成した。各変異体に対し、野生型のミクロプロテアーゼを基準(1U)として比活性を比較した。本研究の端緒であったC113AおよびC113Sは1.8Uで、H59D、S115A、T152Aの変異をそれぞれ追加したC113A/H59Dは2.8U、C113S/S115Aは2.3U、C113A/T152Aは2.7Uとなり最大1Uの活性が上昇した。一方、S115AとT152Aの変異は、それぞれ1.3Uと1.2Uに過ぎず、C113の変異が不可欠であることがわかった。また、H59DとT152Aを一緒に加えたC113A/H59D/T152Aは2.5Uであり、H59DとT152Aは機能的に等価であることが窺えた。その後、Pin1の立体構造に基づき変異箇所を探っていき、最終的にC113S/S115A/L112D/S154A/H157Aの5重変異体において、3.7Uの最高値を得ることに成功した。 一方、昨年度以来進めていた分子動力学シミュレーション解析により、C113Aの変異がH59の側鎖のフリップフロップを抑制し、水素結合ネットワークを介して分子を閉構造に固定することがわかった。この分子の閉構造への固定がプロテアーゼ活性を促進すると推察される。
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