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2018 年度 実施状況報告書

膜脂質によるイオンチャネル開閉制御の分子基盤を探る

研究課題

研究課題/領域番号 17K07360
研究機関福井大学

研究代表者

岩本 真幸  福井大学, 学術研究院医学系部門, 助教 (40452122)

研究期間 (年度) 2017-04-01 – 2020-03-31
キーワードチャネル / 膜 / 脂質
研究実績の概要

細胞膜を貫通したイオン専用の移動路を形成するイオンチャネル蛋白質は、細胞機能に必須の膜電位形成のみならず、神経伝達物質の放出や筋収縮を引き起こすなど、その役割は広範に及ぶ。イオンチャネルの活性(移動路の開閉)は細胞内外からの様々な刺激によって制御されるが、存在場所の細胞膜の脂質組成が活性を左右することも定性的に知られてきた。本研究では、イオンチャネル活性に対する細胞膜脂質の効果を定量的に解析し、これまで明らかにされていない脂質効果の分子メカニズム解明を目指し、細胞膜脂質組成の時空間的変化が活性制御に寄与する可能性について検討する。
本年度は、これまでに発見したKcsAカリウムイオンチャネルがコレステロール存在下で閉塞する現象のメカニズム解明を試みた。その結果、コレステロールに限らず様々な膜ステロール類が濃度依存的に同様の効果を示すこと、いずれの膜ステロール類も濃度依存的に膜張力を減少させる効果があることがわかった。よって、ステロールによるチャネルの閉塞は、膜張力の変化を介した間接的な効果である可能性が示唆された。これを証明するため、KcsAチャネルを酸性pHで活性化した上で、独自の人工膜実験法(CBB法)で膜張力を直接操作しチャネル開確率への影響を調べた。その結果、膜張力の減少によって開確率が低下することがわかった。また、KcsAチャネルが活性化しない中性pH下では、膜張力を増大させてもチャネルの活性化は観測されなかった。以上の結果から、KcsAチャネルの開確率(活性)は第1に酸性pH(水素イオン)、第2に細胞膜張力で制御されていることが明らかになった。

現在までの達成度 (区分)
現在までの達成度 (区分)

2: おおむね順調に進展している

理由

脂質二重膜へのコレステロール投与によりKcsAチャネルが閉塞する、という初年度に発見した現象のメカニズム解明を試み、CBB法を応用してそれを達成することができたため。

今後の研究の推進方策

KcsAチャネルの様に本来張力依存性チャネルと考えられていなかったチャネルにおいても、膜張力が活性調節因子として作用することが明らかになった。細胞膜に埋まっている膜タンパク質は等しく膜張力の影響下にあることから、KcsAチャネルで明らかになった特性は他のチャネル、ひいては膜タンパク質に普遍的な可能性がある。よって今後、KcsAチャネル以外のチャネルにおいて、活性の膜張力依存性を調べる必要がある。また、KcsAチャネルにおける膜張力感知の分子メカニズム解明も試みたい。

次年度使用額が生じた理由

消耗品使用量が想定より少なく、当該年度に新たに購入する必要がなかった。その分の消耗品は次年度に必要となる見込みである。

  • 研究成果

    (5件)

すべて 2019 2018

すべて 雑誌論文 (2件) (うち査読あり 2件) 学会発表 (3件) (うち国際学会 2件)

  • [雑誌論文] Lipid Bilayer Experiments with Contact Bubble Bilayers for Patch-Clampers2019

    • 著者名/発表者名
      Iwamoto Masayuki、Oiki Shigetoshi
    • 雑誌名

      J. Vis. Exp.

      巻: 143 ページ: e58840

    • DOI

      10.3791/58840

    • 査読あり
  • [雑誌論文] Constitutive boost of a K+ channel via inherent bilayer tension and a unique tension-dependent modality2018

    • 著者名/発表者名
      Iwamoto Masayuki、Oiki Shigetoshi
    • 雑誌名

      Proc. Natl. Acad. Sci. U. S. A.

      巻: 115 ページ: 13117~13122

    • DOI

      10.1073/pnas.1812282115

    • 査読あり
  • [学会発表] A tension-modulated modality of the KcsA channel exclusive for acid-activated state2019

    • 著者名/発表者名
      Iwamoto Masayuki、Oiki Shigetoshi
    • 学会等名
      第9回アジア・オセアニア生理学会連合大会
    • 国際学会
  • [学会発表] ステロールによる膜張力を介したKcsAカリウムチャネル活性の制御(Regulation of the activity of the KcsA potassium channel via bilayer tension-mediated sterol action)2018

    • 著者名/発表者名
      岩本真幸、老木成稔
    • 学会等名
      日本生物物理学会第56回年会
  • [学会発表] Tension-mediated regulation of the KcsA channel: a novel dual modality of the channel activation2018

    • 著者名/発表者名
      Iwamoto Masayuki、Oiki Shigetoshi
    • 学会等名
      第49回生理研国際シンポジウム
    • 国際学会

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公開日: 2019-12-27  

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