研究課題/領域番号 |
17K07363
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研究機関 | 大阪大学 |
研究代表者 |
笹原 健二 大阪大学, 蛋白質研究所, 特任講師(常勤) (20432495)
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研究期間 (年度) |
2017-04-01 – 2020-03-31
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キーワード | アミロイド / 蛋白質 / 揺らぎ / アモルファス凝集 |
研究実績の概要 |
1. モデル蛋白質として用いた鶏卵白リゾチームのアモルファス凝集からアミロイド線維への構造転移について研究を行った。生体に存在するポリリン酸の一種であるテトラポリリン酸が効率よくリゾチームの凝集を促進することを見出した。更に、アモルファス凝集が起こる臨界濃度で効率よくアミロイド線維が形成されやすくなることを見出した。熱量測定による解析から、テトラポリリン酸のリゾチームへの結合後、蛋白質分子は、脱水和された構造的に揺らぎの大きい状態となり、攪拌などの刺激を与えるとアモルファス凝集を回避してアミロイド線維へと構造転移することを明らかにした(論文投稿中)。 2.パーキンソン病関連の蛋白質αシヌクレインのアモルファス凝集からアミロイド線維への構造転移に関する研究を行った。アミロイド線維形成は、用いたリン酸塩濃度に大きく依存し、低濃度(1mM以下)と高濃度領域(200mM以上)でアミロイド形成反応が促進され、中濃度(1~100mM)領域では、アミロイド線維形成が抑制されることが分かった。解析の結果、低濃度領域では蛋白質の等電点効果により、高濃度ではリン酸塩の塩析効果にアミロイド線維形成が促進され、中濃度領域ではリン酸塩の塩溶効果によって阻害されることを明らかにした(論文投稿準備中)。 3.酸性性条件下でのβ2ミクログロブリンのアミロイド形成に関する研究を行った(共同研究)。透析アミロイドーシスの原因蛋白質β2ミクログロブリンのアミロイド形成に及ぼす温度と塩効果を相図としてまとめた(論文受理)。また、β2ミクログロブリンのアミロイド形成に及ぼすポリリン酸の効果を明らかにした(論文投稿中)。 4.中性条件下での加熱によるβ2ミクログロブリンアミロイド形成に関する研究を行った(共同研究)。アミロイド形成に伴う熱応答を熱力学的に解析した(論文投稿準備中)。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
3: やや遅れている
理由
1. 鶏卵白リゾチームのアモルファス凝集からアミロイド線維への構造転移に関する研究は、実験を終了し現在論文投稿中。 2.αシヌクレインのアモルファス凝集からアミロイド線維への構造転移に関する研究は、実験をほぼ終了し現在論文投稿準備中。 3.β2ミクログロブリンのアミロイド形成に関する3つの共同研究は、一つは論文として受理され、もう2つは論文投稿中。 4.現在、アルツハイマー病関連のアミロイドβペプチドとⅡ型糖尿病関連の膵島アミロイドポリペプチドを用いたアミロイド研究を進めている。
1-3に関しては、予定通り研究が進んだが、本プロジェクトで一番成果を出したい研究4に関しては際立った成果はまだ得られていない。
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今後の研究の推進方策 |
1.パーキンソン病関連のαシヌクレインアミロイド線維形成に関する論文を投稿する。 2.進展が遅れているアルツハイマー病関連のアミロイドβペプチドとII型糖尿病関連の膵島アミロイドポリペプチドのアミロイド形成に伴う熱揺らぎの研究に精力的に取り組んで遅れを取り戻す。2019年度内に実験を終わらせて、結果を論文にまとめる予定である。また研究全般の結果を総説としてまとめる予定である。
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次年度使用額が生じた理由 |
(理由)1.実験で主に鶏卵白リゾチームとαシヌクレインの二つの蛋白質を使用した。鶏卵白リゾチームは非常に低価格で購入でき、αシヌクレインは所属する研究室で発現・精製が行われ、こちらも非常に低費用で入手できた。したがって、この二つの蛋白質を使って行った研究は、予想していたより低い研究費で進めることができた。2.アルツハイマー病関連とⅡ型糖尿病関連の蛋白質を用いる研究を行っているが、予定より進展が遅く、こちらの研究に使う物品費が少ない状況である。3.当初予定していたより研究時間があまりとれず、物品費の使用が想定より少なかった。 (使用計画) 今後、アルツハイマー病関連とⅡ型糖尿病関連の蛋白質を用いる研究を精力的に進める。用いる蛋白質は、市販品で比較的高価なため、次年度使用額の一部はこれらの蛋白質の購入に使われる。
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