研究課題
P680は光化学系IIに結合する光励起と電荷分離に関わるクロロフィル分子の総称である。これまで、反応中心タンパク質に結合する4分子のPD1, PD2, ChlD1およびChlD2のうち、PD1とPD2が少なくとも正電荷になることが実験で明らかになったことから、少なくとも電荷分離に関わる分子であることは分かっていたが、励起される分子の特定はされておらず、また、ChlD1とChlD2の役割についても不明であった。4分子の中心金属間が8~10 Aの近距離あり、4量体形成しているにもかかわらず、それぞれが励起、電荷分離の過程でどのように機能しているか、また、光阻害を引き起こす三重項P680形成がどの分子によるものかなど、光合成の初発反応の最も基本的な機構について不明な点が多かった。本研究では、これらのクロロフィル分子のMgリガンドの分子が異なっていることがこれらの疑問を解く鍵になると考え、これらのリガンド分子であるアミノ酸を別のアミノ酸に置換した好熱性シアノバクテリアT. elongatus組換え体を作製して、P680の反応機構について様々な分光測定法を組み合わせて調べた。3年目の本研究では、リガンド構造を変えた変異体光化学系IIのP680の電位、励起と電荷分離速度、正電荷移動速度、三重項になるクロロフィル分子の特定を行った。その結果、4つのクロロフィルのうち、ChlD1のリガンドを変えると電位が大きく変わること、ChlD1が光励起されてからChlD1とPheoとの間で電荷分離が起こること、その後、正電荷はPD1/PD2に移動すること、そしてChlD2が三重項になるクロロフィルであることを明らかにした。
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