研究課題
動物の機械受容チャネルは、ピエゾなどその分子実体の解明と作動機序が明らかになっているが、植物の機械受容チャネルはまだよくわかっていない。我々は、シロイヌナズナのMCA1とそのパラログであるMCA2が、電気生理学的に、その分子自体に機械受容能があることを示し、その特性を明らかにすることを目標に研究を進めてきた。これまでの研究で、(1) MCA1[1-173]とMCA2[1-173]をコムギ胚芽無細胞タンパク質合成法で合成し、精製することに成功し、(2) 量的に多く精製できるMCA2[1-173]をリポソームに再構成し、そのチャネル活性を電気生理学的に測定することができた。この成果を発展させ、今年度は、 MCA2[1-173]の機械受容チャネルとしての特性を電気生理学的に解明した。MCA2[1-173]を再構成したリポソームの膜に圧力を与えることにより機械刺激を加えたところ、約40 mmHgより大きい圧力で開く機械刺激依存性が測定された。電位依存性を調べたところ、約120 mVより大きい電圧で開く電位依存性があることがわかった。脂質二重層の力学的性質を変化させることにより機械受容チャネルを阻害することが知られているガドリニウムを与えたところ、機械刺激依存的な開口は阻害されたが、電位依存的な開口は阻害されなかった。チャネル分子と脂質二重層との相互作用を変化させるクモ毒素GsMT4でも同様な効果が得られた。以上の結果より、MCA2[1-173]にはそのタンパク質分子自体に脂質二重層の張力を感じる機械刺激感受性があり、膜張力によってイオン透過孔が開口する性質があることが明らかになった。機械刺激感受性に加えて、強い電位依存性があるという今までにないタイプの機械受容チャネルであり、その分子構造の解明による構造機能連関の探究が期待される。
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