細胞の内外で働く熱は、細胞分裂及び染色体分配の精確さに密接に関わることが明らかにされつつある。本研究の目的は、減数分裂機構における“細胞分裂を制御する熱”動態を明確にし、ミトコンドリアの熱産生動態と先天性疾患や不妊症を引き起こす卵子の特性・品質との関係性を顕在化することにある。今年度も昨年度に引き続き、様々な週齢の卵母細胞において、細胞内小器官、特にミトコンドリアの量、局在、微細構造の解析を先端電子顕微鏡を用いて行うために、電子染色技術、試料作成技術及びミクロトーム組み込み式走査型電子顕微鏡や集束イオンビーム走査型電子顕微鏡の撮像技術の開発を行った。グリッド付ディッシュを用いることにより、共焦点蛍光顕微鏡観察による細胞内小器官の温度変化を温度感受性蛍光プローブを用いて計測した後、細胞を低粘度の樹脂で包埋し、遠心処理を加えることにより、数マイクロメートルの樹脂で覆われた細胞試料を作製する方法を確立した。この方法により、同一細胞において微細構造の光学顕微鏡観察と電子顕微鏡観察を行う光―電子相関顕微鏡系を確立した。さらに、直径約100マイクロメートルの卵母細胞を可能な限り広範囲に三次元電子顕微鏡解析するため試料作製技術を最適化することにより、長時間(~5日間)、高解像度(5 ナノメートル切削ピッチ)、広域(100マイクロメートル観察範囲)の連続切削観察を可能にする集束イオンビーム走査型電子顕微鏡の撮像技術を開発した。
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