研究課題
本研究は新規膜構造形成のメカニズムを出芽酵母の前胞子膜形成をモデルとして明らかにすることを目的として行った。細胞内膜輸送における輸送小胞のターゲット膜との融合は次のような過程で進行する。1)GTP交換因子により活性化したRab GTPaseが輸送小胞上にターゲットされ、2)RabGTPaseのエフェクターとして繋留複合体がリクルートされる。続いて3)SNARE分子の会合により小胞とターゲット膜が融合する。この一連の過程は多くの生物で共通しているが、ターゲット膜が存在せず細胞内に全く新しい膜構造が生成される過程については未知な点が多い。すなわち、新規膜構造形成ではドナーとなる小胞同士の融合により新たなターゲット膜が生成すると考えられ、小胞同士の融合が不可欠である。そこで申請者は、細胞内新規膜構造形成のモデルとなる出芽酵母の胞子形成における前胞子膜形成に関して解析を進めている。これまでに申請者は、前胞子膜形成過程において細胞内膜輸送においてスイッチとして機能するRab GTPase Sec4の活性化が機能することを示した。しかしながら、Rab GTPaseの下流にてどのような因子が機能するか、その詳細については解析が進んでいない。本研究では、Rab GTPaseの下流で機能しうる繋留複合体に焦点を当て、ポストゴルジ小胞がどのように繋留から融合を経て前胞子膜を形成するか解析を行った。今年度は繋留複合体の条件特異的機能欠損株を利用して解析を試みた。その結果、栄養増殖時にSec4の下流にて機能する繋留複合体分子の発現量は著しく低いことがわかった。また、繋留複合体を形成する因子の翻訳後修飾が栄養増殖時と相違があるか検証する目的で、酵母菌株の作製を行った。次年度以降に行うイメージングによる解析のため繋留複合体を形成する因子の可視化を従来の方法通り行い、前胞子膜上への局在が確認された。
3: やや遅れている
薬剤によりターゲットタンパク質をプロテアソーム依存的に分解する系を用い、出芽酵母の減数分裂および胞子形成時特異的にターゲットタンパク質の分解を試みた。繋留複合体タンパク質の栄養増殖時における分解は効率的に行われることは確認できたが、減数分裂、胞子形成時に当該タンパク質の分解の効率は格段に低いことが明らかになった。現在は実験系の改善を図るとともに、発現抑制株における解析を進めている。
現状でやや遅れている胞子形成時特異的にターゲットタンパク質の分解の系の改善を図るとともに、これまでに作製した前胞子膜局在タンパク質のイメージング解析を進める。さらにRab GTPaseの下流にて機能する繋留複合体について、栄養増殖時と胞子形成時の複合体の形成や他の因子との結合、さらに翻訳後修飾に関して生化学的に解析する。
必要な消耗品にて全額を支出することがかなわなかったため。今後の計画に沿い、研究に必要な試薬、消耗品にて全額を支出する予定である。
すべて 2018 2017
すべて 雑誌論文 (3件) (うち国際共著 1件、 査読あり 3件、 オープンアクセス 2件) 学会発表 (8件) (うち国際学会 4件、 招待講演 1件)
Front. Cell Dev. Biol.
巻: 5 ページ: 122
10.3389/fcell.2017.00122
FEMS Yeast Res.
巻: 18 ページ: fox095
10.1093/femsyr/fox095
Mol. Biol. Cell
巻: 28 ページ: 3881-3895
10.1091/mbc.E17-08-0521