研究課題/領域番号 |
17K07378
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研究機関 | 国立研究開発法人理化学研究所 |
研究代表者 |
安藤 恵子 国立研究開発法人理化学研究所, 脳科学総合研究センター, 客員研究員 (40221741)
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研究期間 (年度) |
2017-04-01 – 2020-03-31
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キーワード | 線虫 / 細胞死 / エンドソーム / SMファミリー |
研究実績の概要 |
VPS45はSec1/Munc18(SM)ファミリーに属すタンパク質で、エンドソーム系を介した小胞輸送とアポトーシスにおいて重要な役割を持つ。近年、重症先天性好中球減少症においてヒトVPS45遺伝子異常が好中球のアポトーシスを誘発することが示唆されているが、そのメカニズムは不明である。本研究はヒトVPS45の線虫ホモログ(VPS-45)に着目して遺伝学的および分子生理学的解析を行い、VPS-45変異と細胞死との関連性を明らかにすることを目的としている。 VPS45は小胞輸送の主要因子であるRabエフェクターおよびSNARE分子と結合し、膜のドッキングと膜の融合過程を制御することが知られている。本年度は、VPS-45の機能発現に関わる新たな分子ネットワークを明らかにするため、vps-45変異体のサプレッサー変異のスクリーニングと遺伝学的解析を行った。vps-45は母性効果を示す温度感受性の劣性致死遺伝子であり、vps-45ヌル変異体は制限温度の培養条件で死滅する。そこで、vps-45変異体を許容温度で培養した後、EMS等の変異原で処理し、制限温度で生存するサプレッサー変異体のスクリーニングを行った。その結果、複数のサプレッサー変異を分離することに成功した。これらのサプレッサー変異体をvps-45変異体と数回交配した後表現型を解析し、表現型抑圧の程度の高い2つのアリルを同定した。これらのサプレッサー変異体アリルについて、次世代シークエンサーを用いた全ゲノム解析を行った。現在、候補遺伝子の詳細な解析を行っている。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
網羅的スクリーニングを3回試みており、複数のサプレッサー変異体を分離している。また、表現型解析により強い抑圧効果を示す変異を絞り込んでいる。これらのサプレッサー変異の遺伝子座とDNA変異を同定するため、次世代シークエンスによる全ゲノム解析法を新たに導入し、候補遺伝子の同定を行っている段階である。このように当初計画通りに概ね順調に進展している。
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今後の研究の推進方策 |
1. 次世代シークエンスによる全ゲノム解析を行い、サプレッサー遺伝子候補を同定する。さらにトランスジェニックレスキュー実験を行い、原因遺伝子を同定し、遺伝子産物と変異部位を明らかにする。 2. VPS-45とサプレッサー分子との生化学的な相互作用解析を行う。 3. ヒトVPS45の疾患変異を導入したモデル線虫を作成し表現型解析を行うとともに、サプレッサー変異による表現型抑圧を解析する。
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次年度使用額が生じた理由 |
次世代シークエンスとデータ解析を外注するため、8サンプル分の予算を計上していたが、今年度は4サンプル分の解析を行ったことと、全ゲノム解析が安価になりつつある昨今の研究状況によって、当初予定していた予算よりも実際の支出が抑えられた。変異体の全ゲノム解析および変異部位の詳細なシークエンス解析のために当該助成金を次年度の早い時期に支出する予定である。
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