オートファジーによって得られた消化産物は、リソソーム膜上のトランスポーターを介して細胞質に供給されるが、その詳細なメカニズムはよくわかっていない。応募者は12回膜貫通型MFSトランスポーターであるSpns1が、リソソーム膜上に局在することを見出した。さらに、Spns1は、アミノ酸飢餓で誘導されたオートファジーからの回復過程、すなわちmTROC1の再活性化に関与することを示した。これはSpns1がオートファジー産物の細胞質への輸送を担う可能性を示唆した。肝臓特異的Spns1ノックアウトマウスを解析したところ、肝臓肥大や肝臓の炎症マーカー亢進が確認され、オートファジーのアダプター/基質のp62の蓄積や、電子顕微鏡や免疫染色の解析から、リソソーム(オートファゴソーム)の形成異常が認められた。この特徴はオートファジー欠損マウスに現れる特徴と一致する。Spns1の輸送基質の同定するため、肝臓及び肝細胞のオートファゴソーム・リソソーム画分について、野生型と肝臓特異的Spns1ノックアウトの間でメタボローム解析を行った。この解析から、Spns1欠損時に肝臓やそのリソソーム分画に蓄積傾向のある代謝産物を複数見出した。これらについて、in vitroプロテオリポソームアッセイで輸送基質の確認・定量を試みたが、その検証には至らなかった。 酸化ストレスなどによりユビキチン化蛋白質が蓄積すると、p62はユビキチン化蛋白質とともにアグリソームを形成する。アグリソームは、オートファジーによって分解される。応募者らはこのアグリソームの形成にUSP10が重要な働きを担うことを報告した。USP10はp62だけでなく、ストレス顆粒マーカーであるG3BP1とも相互作用することで、ストレス顆粒形成や、MTOC付近へのアグリソーム形成、さらには神経変性に関わる凝集性蛋白質の病原性凝集隊形成に関与することを報告した。
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