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2017 年度 実施状況報告書

がん浸潤時における細胞骨格パターン形成機構の3次元多重染色超解像顕微鏡による解析

研究課題

研究課題/領域番号 17K07384
研究機関京都大学

研究代表者

木内 泰  京都大学, 医学研究科, 准教授 (70443984)

研究期間 (年度) 2017-04-01 – 2020-03-31
キーワード超解像顕微鏡法 / 細胞骨格 / 3次元イメージング
研究実績の概要

研究代表者が最近開発した超解像顕微鏡法IRIS(Image Reconstruction by Integrating exchangeable Single-molecule localization)は、既存の手法よりも高密度な標識による精緻な画質と標的タンパク質の連続多重染色を可能にしている(Kiuchi et al., Nature Methods 12: 743-746, 2015)。IRISでは、標的タンパク質に結合解離する蛍光プローブによって、標的を標識する。結合解離プローブは、絶えず入れ替わっているため、標的に強く結合する蛍光抗体や蛍光タンパク質による標識と比べて、蛍光退色によるシグナルの消失がない。このためIRISは、多数枚の蛍光画像が必要になる3次元超解像イメージングに適している。本研究では、ライトシート状のレーザーを斜めに照射するHILO様照明とIRISを組み合わせることで、Zスライス超解像画像を得ることを可能にした。さらに顕微鏡とカメラの間に補償光学系を導入することで、astigmatismを利用して蛍光単分子のZ方向の位置を高精度に決定することを可能にした。この3次元超解像イメージングへと発展させたIRISによって、細胞頭頂部の微小管が、Z方向で幅500 nmの範囲内で重なり合っている様子が観察できた。これらの研究成果は、第69回日本細胞生物学会年会(2017.6, 仙台)や第10回「細胞を創る」研究会(2017.10, 京都)、第50回バイオサロン(2017.12, 京都)で報告した。

現在までの達成度 (区分)
現在までの達成度 (区分)

2: おおむね順調に進展している

理由

転移性のがん細胞は、生体組織中の細胞外基質や周囲の細胞と相互作用し、細胞骨格と接着斑を3次元的に適切なパターンで再配置する。研究代表者は、これらの細胞内構造の3次元的な再構成機序を解析するため、IRIS方式の3次元超解像イメージングを試みてきた。これまでは、全反射照明と落射照明を組み合わせることでカバーガラスから200 nmほどの高さのアクチン線維、微小管、中間径フィラメントの3次元的な超解像画像を得てきた。しかし、この方法では、観察できるZ方向の範囲は、カバーガラス近傍に限定されてしまう。そこで、本研究では、IRISにHILO様照明と補償光学系を組み合わせることで、カバーガラスから数十マイクロメータの高さでも観察できる3次元IRIS超解像イメージングの構築を進めている。

今後の研究の推進方策

IRISは、蛍光単分子の高精度な位置決めによる超解像顕微鏡法(PALMやSTORM)の原理に基づいている。この方式は、多数枚の蛍光単分子画像が必要になり、撮影が数分から数十分、また特に長い場合は数時間にわたる。このため、顕微鏡ステージ上で固定したサンプルのドリフトが問題になる。これまで、XY方向のドリフトを補正するため、蛍光単分子画像の撮影中に30秒に1回ほど明視野画像を撮影してきた。その明視野画像からサンプルのXY方向のドリフト量を見積もって、補正を行ってきた。またZ方向のドリフトの補正は、顕微鏡システムに導入されているオートフォーカスシステムで行ってきた。しかし、このZドリフトの補正方法は、カバーガラス近傍の高さでは高精度であるが、カバーガラスから離れた高さでは工夫が必要である。本研究では、この問題に対していくつかの装置と条件を検討する。また細胞骨格や接着斑の形成と崩壊に関わるシグナル分子に対する結合解離プローブの開発も進める。

次年度使用額が生じた理由

次年度使用額は、今年度の研究を効率的に推進したことに伴い発生した未使用額であり、平成29年度請求額とあわせ、平成30年度の研究遂行に使用する予定である。

  • 研究成果

    (3件)

すべて 2017

すべて 学会発表 (3件) (うち招待講演 2件)

  • [学会発表] 高密度・多重染色超解像顕微鏡法IRIS の3 次元イメージングへの発展2017

    • 著者名/発表者名
      木内 泰、渡邊 直樹
    • 学会等名
      第69回日本細胞生物学会
  • [学会発表] 高密度・多重染色超解像顕微鏡法IRIS - 多種のタンパク質を同一細胞で可視化する技術 -2017

    • 著者名/発表者名
      木内 泰
    • 学会等名
      「細胞を創る」研究会 10.0
    • 招待講演
  • [学会発表] 多種のタンパク質の高密度・連続多重染色を実現した超解像顕微鏡法IRISの原理と実践2017

    • 著者名/発表者名
      木内 泰
    • 学会等名
      第50回バイオサロン
    • 招待講演

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公開日: 2018-12-17  

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