研究実績の概要 |
細胞膜や分泌系オルガネラの膜タンパク質の膜への挿入は、小胞体のタンパク質膜透過チャネル(トランスロコン)を介して行われる。このトランスロコンは分泌タンパク質等の膜透過と共用であり、膜挿入における膜貫通配列の識別機構、脂質環境への側方輸送やその動態などには不明な点が多い。本研究は、複数の膜貫通配列からなるマルチスパン膜タンパク質構造形成へのトランスロコンの寄与を明らかにすることを目的としており、本年度は以下の研究を実施した。 ●疎水性配列の認識、保持に働くSec61チャネル内部位の同定・機能解析 マルチスパンタンパク質には、膜組み込みには不十分な疎水性度の膜貫通配列がしばしば見受けられる。研究代表者らは、このような“中位”疎水性配列が、トランスロコン本体であるSec61チャネルにて一時停止することを以前に報告した(Kida et al, MBoC 2016)。Sec61チャネルによる配列認識・保持作用を明らかにするため、停留する中位疎水性配列と相互作用するチャネル内部位の特定を進めた。既に報告されている構造情報を基に、ヒトSec61チャネルの任意の位置にCys残基を配置したCysスキャンニング変異体を作製し、更にそれらの安定発現細胞株(293-H細胞)を樹立した。そして、これら細胞より調製した小胞体膜を用いて、膜透過基質とのin vitroでのクロスリンク解析を進めた。その結果、脂質二重層への出口である「ラテラルゲート」に加えて、その反対側のチャネル内壁が、中位疎水性配列とクロスリンクされることが判明した。Sec61チャネルが、少なくともこの2ヶ所での相互作用を通じて、配列の認識、保持に寄与することが示唆された(論文投稿中)。
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