研究課題/領域番号 |
17K07394
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研究機関 | 久留米大学 |
研究代表者 |
齋藤 成昭 久留米大学, 分子生命科学研究所, 教授 (30352123)
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研究期間 (年度) |
2017-04-01 – 2020-03-31
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キーワード | 栄養飢餓 / グルコース / 細胞周期 / 細胞応答 / 細胞内シグナル伝達 |
研究実績の概要 |
真核細胞には、細胞外の栄養状況に応じて細胞内の機能を調節する応答機構が備わっていると考えられるが、その詳細は未だ不明である。本研究では、分裂酵母を用いて、細胞外グルコース濃度の変化に対する細胞応答の背景にあるシグナルネットワークの実体を明らかとし、さらにグルコース濃度変化に対する細胞応答機構の全容を解明することを目指す。実施計画に従い2017年度は、(A)グルコース濃度変化を感知する「分子センサー」機構の解析と、(B)グルコース輸送体の遺伝子発現調節および局在化機構の解析に注力した。 研究は順調に進んでいる。まず、(1)分裂酵母細胞には2種類の独立した「分子センサー機構」が存在している事、(2)そのような「センサー機構」のうち一方は細胞外グルコース濃度変化を直接的にモニターしており、他方は細胞内の解糖系により代謝されたグルコース代謝産物の量から間接的にモニターしている事、が明らかとなった。さらに、(3)細胞外グルコース濃度を直接的にモニターするセンサー機構は、CaMKKシグナル経路を介して転写抑制因子Scr1の局在をコントロールすることでグルコース輸送体の遺伝子発現機能を調節していることが明らかとなった。他方、解糖系を介する間接的センサー機構は、やはりグルコース輸送体遺伝子の発現調節には関与しているものの、Scr1局在制御には関与していなかった。間接的センサー機構と輸送体遺伝子発現制御を結ぶ分子機構の解明は今後の課題である。 さらに、当該年度においては、グルコース濃度変化に対する細胞周期応答に関わるシグナル経路の理解が進んだ。(4)細胞外グルコース濃度の低下に際し、一過的にMAPキナーゼ経路が活性化し、Cdc25キナーゼの局在をコントロールすることで、細胞周期の進行を調節しているらしい。今後、上述のセンサー機構とMAPキナーゼ活性制御を結ぶ分子機構の解明に着手したい。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
大きなトラブルもなく、概ね研究計画に従って順調に進捗しており、実績の概要欄に述べたような成果が得られている。グルコース輸送体の局在化制御機構に関しては、TORC2シグナル経路が関与していることは明らかとなったものの、当初TORC2キナーゼの分子標的であると予想していたタンパク質が実は標的でないことが判明し、解析がやや難航している。他方、細胞周期進行制御に関しては、上述の通り当初計画以上の進展があった。それらの状況を総合的に勘案して、上記のような自己評価とした。
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今後の研究の推進方策 |
実績の概要欄に述べた通り、細胞外グルコース濃度変化を感知するセンサー機構には、独立な二種類の機構が存在することが判明した。これらのセンサー機構と、(1)グルコース輸送体遺伝子発現制御、および、(2)MAPキナーゼを介した細胞周期進行制御、を結ぶ分子機構の理解に注力しつつ、研究計画の推進を図りたい。
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次年度使用額が生じた理由 |
当初の計画とは異なり、当該研究に関わる物品費の一部、旅費およびその他の費用を、当該研究機関から支給される教室費でまかなうことができた。そのため生じた「次年度使用額」は、2018年度に購入予定の物品費、旅費などに充当する予定である。
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