研究課題
申請者らは、ヒトデ卵母細胞サイクリンBの不活性なmRNAの短いポリA鎖には、数塩基のオリゴUが結合していることを見出している。このオリゴUを含む3’配列は、減数分裂再開時にトリミングされ、引き続きポリA鎖が伸長して、サイクリンBの翻訳が開始される。トリミングが終了しなければ発生・細胞分裂に不可欠なサイクリンBが、分解され尽くされて、致死となってしまう。トリミングが終わる領域にはCPSFが結合する「AAUAAA」配列が存在するので、何らかの関与が予想される。そこで本年度は予定通り、短いポリA末端から20塩基上流に存在する、CPSF結合配列(AAUAAA)を、含む、または含まない、mRNA3’領域RNAをin vitroで合成し、それを卵母細胞にマイクロインジェクションして、ホルモンで処理した。予測では、CPSF結合配列無で完全分解されることを期待していたが、特に分解は亢進されなかった。この結果は、20塩基上流CPSF結合配列(AAUAAA)にはトリミング終了機能がないことを示唆する。しかし、塩基配列を再度検討すると、短いポリAが始まる直前(3塩基上流)の塩基配列がAAUであって、ポリAが付加するとAAUAAAとなり、もしかすると、この配列にもCPSFが結合しトリミングを終了させているのかもしれない。現在、この可能性を確かめるために、3塩基上流AAUをAAAに改変したRNAも作成して、分解するかどうか検討している。さらにリボゾームタンパク質mRNAの3’末端についても、減数分裂再開前後・発生過程でその変化を調べたところ、減数分裂過程でU化され、ポリA伸長されることが明らかになった。この結果は、ホルモン処理後に不活性になったmRNAの短いポリA鎖に、新たに数塩基のオリゴUが結合することを意味する。現在、人工合成したmRNAを卵内に注入して、U化が起こるかどうかを調べている。
2: おおむね順調に進展している
予想外にmRNAトリミングを防止できなかったが、新たな候補配列を見出し検討中であり、予想外の結果への対応もできている。さらに、まったく新たな遺伝子においてもU化とトリミング現象を見出しており、特にU化にかかわる酵素の探索を行うことが可能になっている。したがって、本分野のさらなる発展の基盤を作り上げた年度となった。
引き続き、トリミングを制御するmRNAの配列を明らかにするために、候補配列を改変したmRNAを人工合成して、卵内にマイクロインジェクションする。さらにリボゾームmRNAにも着目して、トリミング機構とU化にかかわる酵素を明らかにする。
すべて 2018 2017
すべて 雑誌論文 (1件) (うち査読あり 1件、 オープンアクセス 1件) 学会発表 (1件)
Sci Rep.
巻: 8 ページ: 1-14
10.1038/s41598-018-19845-6