ヒトデ卵母細胞の母性mRNAサイクリンBには、短いポリA鎖の3‘端に数塩基のオリゴUが結合している。通常オリゴU配列は、他の生物においてはmRNA分解に働くが、ヒトデでは分解されず、減数分裂再開時にUはトリミングされ、引き続きポリA鎖が伸長して、サイクリンBの翻訳が開始される。なぜmRNAが分解されないかを明らかにするために、本研究ではトリミングが停止する領域の突然変異体を作成したが、予想に反してまったく影響はなかった。よって、ヒトデでは、脱U化酵素活性がポリA化酵素の活性上昇と競合する結果として、トリミングが途中で終了し、ポリA伸長すると結論した。一方、胞胚期以降にサイクリンB mRNAのポリA鎖が短縮し、U化され、分解されてしまうことを30年度に見出した。人工合成したサイクリンB mRNA もU化され分解されることを確かめられたので、発生ステージに応じて、母性mRNAのU化意義が変わってくることが明らかになった。また30年度には、(1)リボゾームタンパク質mRNAの3’末端の長いポリA鎖が、GVBD後にトリミングされ、新たに数塩基のオリゴUが結合すること、さらに驚くべきことに、(2)胞胚期以降にオリゴUからポリA鎖が再伸長することを明らかにした。すなわち(2)は、翻訳に使われたmRNAのポリAが短縮し、再伸長することを明瞭に示した初めての例である。これらの結果は、リボゾームタンパク質mRNAは減数分裂再開に際して、いったん翻訳がU化によって停止されるが、分解を免れて再利用されることを示している。すなわちU化は、分解か再利用かを選択する前シグナルとして働いていることが明らかになり、現在、論文を作成し、投稿準備している。なお、減数分裂再開時にポリA化を引き起こすために必要な細胞内pHの制御についての研究について研究を進め、J.Cell Biol.2報が採択されている。
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