これまで我々は、脊椎動物初期胚発生研究のモデル系として古典的に用いられてきた両生類アフリカツメガエルをモデル系として使用し、動物のメジャーな栄養貯蔵源であるグリコーゲンの代謝に関連する分子群の機能解析を行ってきた。グリコーゲンは成体では筋肉、肝臓、脳などに貯蔵され、種々のエネルギー要求性の生理活動および飢餓ストレスへの対応等におけるエネルギー源として利用されていることが知られている。しかしながら、初期発生におけるグリコーゲンの生理機能についてはそれほどよく知られていない。両生類の卵はグリコーゲンを豊富に(乾燥重量で約5%)含んでいること、そして胚の原腸陥入開始に近い時期にグリコーゲン代謝が活発になることが古くから知られており、グリコーゲンが少なくても両生類では初期胚発生に重要な役割をもつ可能性が高いことが示唆される。本研究課題において我々は、アフリカツメガエルの初期発生過程において、複数のグリコーゲン代謝関連酵素が時期あるいは空間特異的に機能して、それぞれ別々の発生過程を制御することを見出し、その分子機構について組織特異的マーカー遺伝子発現変動の解析などにより研究を進めてきた。今年度は前年度から引き続き、グリコーゲンの代謝関連酵素そしてグリコーゲン関連シグナル伝達分子の機能阻害あるいは活性化を試み、生体から摘出して培養したアフリカツメガエル卵母細胞の成熟、死などの諸過程におけるグリコーゲン代謝関連経路の関与について検討を続けた。
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