大人の神経幹細胞は脳内の海馬や側脳室周辺領域にわずかに存在し、ほとんどが増殖や分化を停止した休眠状態にある。休眠状態では細胞内のタンパク恒常性を制御する特別な機構が想定された。我々は、増殖神経幹細胞が休眠状態に入る際に、細胞内の分解を担う細胞小器官であるリソソームが増加して、増殖に関わる膜タンパク質シグナル受容体をより速やかに分解すること、また、リソソーム機能を阻害すると神経幹細胞は休眠状態を脱するが、逆にリソソーム活性を人工的に上昇させると増殖をやめて休眠状態に入ることを見いだした。この成果により、成体脳神経幹細胞において、リソソーム活性が休眠状態の重要な制御因子であることを明らかにした。
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