研究実績の概要 |
ミドリイシ属サンゴの配偶子認識に関して、主に1)異種間受精を示す種間で、野外で受精しうるか、2)この2種での浸透交雑の可能性、3)配偶子認識にかかわる遺伝子の種間比較を行った。1)に関して、異種間受精を示すウスエダミドリイシとドーンミドリイシを材料に、1)2種の精子を混在させた状態での受精選択実験などを行い、たとえIn vitroの系で異種間受精を示しても、異種と同種の精子を混在させると同種と選択的に受精することが判明した。一方で、組み合わせによっては、同種の精子が混在していても異種精子と受精する組み合わせもあった。このことは、野外で異種間受精する可能性を示している。また、産卵の同調性を沖縄本島近辺の3地点で調べたところ、瀬底島のドーンミドリイシは活発に産卵が見られなかった。これは、瀬底に生息するドーンミドリイシでは配偶子の形成が活発でないことに起因するようであった。この理由として、ドーンミドリイシの生息密度がウスエダミドリイシに対して少ないことが関係する可能性があった。そこで、2)これらの種で実際に交雑が起きているかを検討するために、マイクロサテライト解析(Structure, NewHybridsなど)による浸透交雑の可能性を検討した。その結果、明確なF1,F2 戻し交雑は検出できなかったが、交雑体であると思われる群体は多数検出した。従って、このような種では受精の種選択が曖昧で異種間で交雑がおきている可能性があった。そこで、交雑する2種間でこれまで、候補に上がっている配偶子認識タンパク質の配列を比較するためにRNA単離を行うサンプルを採集した。2019年度にこのサンプルでRNA-seqを行い比較検討する予定である。
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