研究実績の概要 |
遺伝情報が読み出される転写では、遺伝子の核内配置やクロマチン構造が時々刻々と変化しながらmRNAが合成されている。そこで、発生分化過程での転写動態の可視化に成功している細胞性粘菌を用いて、遺伝子の核内配置との同時計測を試みた。標的遺伝子の核内配置を経時的に可視化するため、CRISPR/Cas9システムを用いる方法やSunTagシステムを組み合わせることで、理論上1,000分子を超えるGFPが標的遺伝子近傍に集積するように設計した。標的特異性の高い領域の検討や標的数を変えるなど生細胞内での効率的な標的遺伝子の可視化を試みてきたが、現在までに生細胞内での効率的な輝点の観察には至っていない。この過程で、細胞質のRNA分子の可視化と正確なゲノム編集技術の確立という2つの結果が得られた。1つ目のRNA分子の可視化では、テトラサイクリン誘導発現系により発現誘導したRNA分子が、輝点として細胞質で観察された。この輝点は、GFPが結合する標的リピート数依存的に蛍光強度が増加することや発現誘導しない条件下では観察されないことがわかった。2つ目の正確なゲノム編集技術の確立では、野生型Cas9に存在する2つのヌクレアーゼドメインの片方に変異を入れたニッカーゼを利用した。2つのガイドRNAとCas9ニッカーゼを同時に発現させるベクターを構築し、細胞内に導入することで約20%以上の高効率で約2kbの欠失を生じさせることに成功した。このベクターは、一度のクローニングで2つの標的配列を同時に挿入することができるため、時間的な効率化も実現している。
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