研究課題/領域番号 |
17K07417
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研究機関 | 日本大学 |
研究代表者 |
野呂 知加子 日本大学, 医学部, 客員教授 (80311356)
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研究分担者 |
井上 菜穂子 日本大学, 生物資源科学部, 准教授 (00509515)
斎藤 稔 日本大学, 文理学部, 教授 (20318330)
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研究期間 (年度) |
2017-04-01 – 2023-03-31
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キーワード | 再生 / 無性生殖 / 有性生殖 / ヤマトヒメミミズ / シミュレーションモデル / 脳神経系 / 分子実体 / ゲノム変異 |
研究実績の概要 |
本研究は、砕片分離と再生による無性生殖を行うヤマトヒメミミズ(ヤマト)と、有性生殖のみ行う近縁種ミサカヒメミミズ(ミサカ)との比較解析により、次の2つの課題を解明し、再生・生殖のしくみを分子レベルで明らかにすることを目的とする。 1. 砕片分離と無性生殖の分子メカニズム 2. 有性生殖のスイッチおよび誘導物質の実体 令和3年度は、1-3) 長くなると自切するメカニズム:頭尾勾配物質の実体について、研究分担者井上と共同研究した。神経ペプチドに着目し、プロテオミクス比較解析した。ヤマトおよびミサカを2つに切断し、前半と後半のサンプルを、それぞれSDS-PAGEで分画し、20-40kDa領域のゲルを切り出して消化した。抽出物を限外濾過により、分子量10,000以下画分をLC-MSにて質量分析を行った。その結果、それぞれのサンプルから200-300種類のペプチドが検出された。サンプル毎に特徴的なペプチドは、ヤマトでは100種類程度、ミサカでは30-60種類程度であった。これらのうち数種類について、詳細に解析中である。さらに、ヤマトおよびミサカについてメタボローム比較解析を行った。その結果、ポリアミンの代謝系がヤマトヒメミミズで比較的高いことが示唆された。候補分子およびその合成酵素の阻害剤をヤマトヒメミミズに与え、成長、砕片分離、有性化への影響を見ている。 一方、2-1) 有性生殖誘導物質/抑制物質の実体については、有性化効率が高いヤマト3クローンのうち1クローンのDNAを遺伝研に送り、先進ゲノム解析支援の全ゲノム解析を依頼している。構造が複雑なので、本年度末時点でまだ解析中である。またミサカのDNA解析も依頼し、2-3) 自家受精の有無と有性生殖の意義に関する情報や、1-1) 頭部再生のメカニズムについて明らかにしたいと考えている。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
3: やや遅れている
理由
コロナ禍のため大学の研究室に立ち入ることができない時期が長かったので、実験が進まなかった。しかし、研究分担者井上に依頼することや、メタボローム解析を委託することで、頭尾勾配物質の実体分析を進めることができた。 一方、先進ゲノム支援に採択されたので、新たな展開が期待できるようになった。遺伝研担当者にゲノムDNAを送ったが、先方もコロナ禍のためか、ゲノムの複雑性のためか、解析が遅れており、まだ結果が来ていない。
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今後の研究の推進方策 |
令和4年度は、当初の研究課題のうち、1-3)長くなると自切するメカニズム: 物質勾配のシミュレーションと分析に関して、自切抑制物質候補である神経ペプチドについて、令和3年度の研究成果を元に分子解析を進める。2-3)自家受精の有無と有性生殖の意義に関しては、ヤマトヒメミミズのクローン間のゲノムを比較し、無性生殖を行うヤマトヒメミミズは真に均一なゲノム配列を持つかどうかについて検討し、ヘテロ接合度を分析する。また、1-1)頭部再生のメカニズム: 頭部7体節再生する理由 双頭再生の分子機構、および 1-2)後部再生のメカニズム: ネオブラストの関与 成長帯の細胞の起源についても検討を行う。無性生殖するヤマトヒメミミズは、ナイフで切断した場合、8体節目以降の どの部位からも頭部7体節を再生するが、ミサカヒメミミズは不完全な頭部4体節を再生する。両者の再生時の遺伝子発現およびゲノム比較解析を行い、その理由を明らかにする。後部再生については、ヤマトヒメミミズでは肛門直前にある増殖帯の細胞が関与し、これはネオブラストという中胚葉性幹細胞が起源であると考えられてきたが、ネオブラストが存在しないミサカヒメミミズでも後部再生が起こることから、後部再生に関わる細胞源について再確認を行う。2-1) 有性生殖誘導物質/抑制物質の実体:低密度飼育の効果と個体数範囲については、有性化促進物質について試験を行う。2-2) 生殖巣の起源と発生/再生による位置移動に関しては、生殖幹細胞およびそれを受け入れる生殖巣を形成する細胞の起源について、細胞マーキングや遺伝子マーカー等を使って解析する。
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次年度使用額が生じた理由 |
研究がコロナ禍のため、物質分析、遺伝子解析にやや遅れが出ているので、これらを進めるために、次年度使用する。
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