研究課題
本研究では、発生初期の卵の分子的な非対称性が、どのように体節形成時の遺伝子発現の振動へと発展するかを明らかにすることを目指し、オオヒメグモを用いて解析している。これまでの研究で、前後軸に沿ったパターンの形成はヘッジホッグシグナルにより制御されており、ヘッジホッグシグナルにより負の制御をうけるmsx1遺伝子が体節形成にはたらくこと、さらにオオヒメグモの体節形成は頭部、胸部、後体部の各領域で異なる様式で行われることが分かっていた。前年度までに、msx1遺伝子がヘッジホッグシグナルと密接な相互作用をし、体の各領域における縞パターン形成に関わることを明らかにしてきた。本年度はこれまでの発見を論文としてまとめるために必要となる2つの解析を行った。(1)msx1発現開始領域の細胞にレーザーを照射し、続いて波の挙動を観察することにより、msx1の発現の波の特性を詳細に解析した。(2)msx1を局所的にノックダウンし、各領域の体節形成における機能を細胞レベルで解析した。これらの実験では、胚の染色、画像データの取得、さらに取得した画像データの数値的解析を行った。本年度はさらに、オオヒメグモのゲノムプロジェクトを共同で進めたグループと、新たな論文を共同で発表することができた。また、海外の研究者から国際学会への参加を打診され、参加・シンポジウムでの発表を行った。オオヒメグモを用いた発生生物学研究がゲノムワイドに、細胞レベルで行うことが可能となっていることを発表した。
3: やや遅れている
本年度は、論文の執筆と、論文作製に不足していたデータの取得に多くの時間を割いた。新たにレーザーを使った実験を取り入れ、データをより強固にすることができた。微小組織や単一細胞に由来するRNA-seq実験とCRISPR/Cas法の確立に向けた実験は、まだ準備段階である。
クモ胚の単一細胞由来のRNA-seq法の確立を行い、さらにmsx1のeRNAiと組み合わせた方法による遺伝子探索を開始する。CRISPR/Casによるノックインの実験系の確立も目指す。
本研究で前年度までに発見した新しい現象をより深く解析することを先行させたため、次年度使用が生じた。次年度は当初に予定していた微小領域からのRNA-seqと、遺伝子発現系構築のために必要となる試薬を購入する計画である。
すべて 2019 2018 その他
すべて 国際共同研究 (3件) 雑誌論文 (3件) (うち国際共著 1件、 査読あり 3件、 オープンアクセス 3件) 学会発表 (2件) (うち国際学会 2件、 招待講演 1件) 備考 (1件)
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巻: - ページ: -
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