研究課題/領域番号 |
17K07419
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研究機関 | 久留米大学 |
研究代表者 |
佐野 浩子 久留米大学, 分子生命科学研究所, 講師 (90506908)
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研究期間 (年度) |
2017-04-01 – 2020-03-31
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キーワード | CCHa2 / 糖依存的転写 / ポリオール経路 / 求愛行動 / 神経回路 / インスリン |
研究実績の概要 |
本研究では、栄養が脳の発達を左右する仕組みを明らかにすることを目的とし、ショウジョウバエの糖応答性ホルモンCCHa2によるFruitless神経回路 (求愛行動を制御する回路) の制御機構を解析している。まず始めに、CCHa2の糖依存的な発現誘導機構を解析し、CCHa2の発現には糖依存的転写因子Mondoが必要であり、Mondoの活性化にはグルコース代謝の副経路であるポリオール経路が必要であることを明らかにした。さらに、RNA-seq解析により、ポリオール経路はMondoの標的遺伝子の約80%を制御できることが分かった。これらの結果から、ポリオール経路はMondoの上位ではたらく主要な糖代謝経路であることが明らかになった (投稿準備中)。次に、CCHa2によるFruitless神経回路の制御機構を解析した。CCHa2はインスリン分泌促進因子であることから、インスリンを介してFruitless神経回路に作用すると予想された。そこで、インスリン受容体 (InR) のレポーター系統を作製し、InRが少数のFruitless神経回路で発現し、それらの細胞が求愛行動に必要であることを明らかにした。次に、Fruitless神経回路でInRの機能阻害および機能亢進を行い、適切なレベルのインスリンシグナルが正常な求愛行動に必要であることを明らかにした。さらにCCHa2-R変異体における求愛行動の低下がインスリン産生細胞の人為的な刺激によって回復することから、CCHa2はインスリンを介してFruitless神経回路に作用することにより求愛行動を制御していることが明らかになった。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
平成29年度の目標であった糖によるCCHa2の発現誘導機構について、関与する糖依存的転写因子およびその上流ではたらく糖代謝経路を同定することができた。もう1つの目標であるCCHa2によるFruitless神経回路の制御様式 (形成または機能) については、解析に必要なショウジョウバエ系統を作製したが、解析には至っていない。しかし、平成30年度に予定していたCCHa2のFruitless神経回路に対する作用経路の同定を前倒しで行い、ほぼ完了した。従って、本研究は順調に進んでいると判断される。
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今後の研究の推進方策 |
CCHa2の発現誘導機構について、論文発表を行う。CCHa2によるFruitless神経回路の制御については、CCHa2受容体遺伝子座にFRTを挿入した系統を作製した。この系統を組換酵素FLPと組み合わせることにより、CCHa2受容体遺伝子を任意の時期・組織でノックアウトすることができる。そこで、様々なFLP系統の中から、本解析に適当なものを選択し、Fruitless神経回路が形成される幼虫~蛹期またはFruitless神経回路形成後の成虫期にCCHa2受容体遺伝子をノックアウトする。ノックアウト個体の求愛行動を解析することにより、CCHa2がFruitless神経回路の形成または機能のどちらに必要であるかを明らかにする。CCHa2のFruitless神経回路に対する作用経路については、平成29年度に得られた知見を確認する実験を行う。まず、CCHa2がインスリンを介して機能することを、インスリン受容体基質であるchicoの表現型を解析することにより、確認する。さらに、インスリンシグナルの下位ではたらく転写因子dFoxoの関与について解析を行う。
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次年度使用額が生じた理由 |
出版費用が当初見積より低額であったため、差額が生じた。繰越額は少額なので、使用計画に変更はない。
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備考 |
Researchmap link https://researchmap.jp/sapphire
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