研究課題
哺乳類発生においては、ノードにおいて繊毛運動が作る左向きの水流が、ノードの左右周縁部で遺伝子発現の差を引き起こし、その後の発生の左右性を規定することがわかっている。この水流検知機構として提唱されている説のひとつは “two cilia model” と呼ばれ、一部存在する不動性の繊毛が流れに押されて倒れることでカルシウムイオン流入が引き起こされるとしている。しかしノードの左側にも右側にも水流自体はあるので両者の細胞が異なる応答することについての答えにはなっていない。一方、ノードと相同な魚類のクッパー胞では左右で表面近くの流速が異なるという報告があり、これと同じことがマウス胚でも起きるとすれば左右検知機構として成り立ちうる。そこで、胚をFEPチューブに閉じ込めて自作のライトシート顕微鏡で観察する方法を開発し、これまでノードの水流をその凹みに対して平行な焦点面で見ていたものを、断面から見られるようにした。そこに蛍光ビーズを流しPIV解析を行い、ノード表面近くの水流を解析した。結果、左右ではっきりした違いはみられなかった。つまり、シンプルなtwo cilia modelは成立困難であることがわかった。同時に、流動電位が関わる可能性について、その計測と印加を試みたが、これについては装置を構築したものの、その不具合を解決しきれずデータ取得には至らなかった。これについては今後も実験を継続する。ところで、ノード繊毛の基部にある基底小体の非対称性を調べたところ、その向きは元々ランダムなのが時間経つと偏ることを示唆する、予備的な結果が得られた。これが水流の検知機構に関わっている可能性を含め、今後検討を進める。
すべて 2020
すべて 雑誌論文 (2件) (うちオープンアクセス 1件) 学会発表 (1件)
Development, Growth & Differentiation
巻: 62 ページ: 495~502
10.1111/dgd.12695
Nature Communications
巻: 11 ページ: 1631
10.1038/s41467-020-15409-3