研究課題
基盤研究(C)
哺乳類発生の左右決定においては胚表面の繊毛運動が作る水流が決定的に重要だが、水流が胚自身によって検知される機構は未だ謎である。そこで我々は、その機構として考えられうるモデルの検証を行った。その中で最も有力視されている、「水流のずり応力が左右の情報を伝える(ずり応力モデル)」については、少なくとも提唱されているモデルそのままでは成り立たなそうであることがわかった。他のモデルについては、研究期間中に結論出すには至らず、今後さらに解析を続ける。
発生学
本研究は、生物物理学的には、生体内において水流がその向きだけでなく上流・下流という位置情報を伝える、他にあまり例のないユニークなシステムの解析である。発生学的には、体軸決定という最も基本的な問題に迫るものである。医学的には、ヒトにも稀に見られる内臓逆位症の原因を理解するためのものである。結果、完全な解明には至らなかったが、今まで最有力視されてきた仮説について、少なくとも提唱されているそのままのかたちでは成立しないであろうという知見を得ることができた。