研究課題/領域番号 |
17K07426
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研究機関 | 国立研究開発法人理化学研究所 |
研究代表者 |
工樂 樹洋 国立研究開発法人理化学研究所, ライフサイエンス技術基盤研究センター, ユニットリーダー (40391940)
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研究期間 (年度) |
2017-04-01 – 2020-03-31
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キーワード | ゲノム情報 / 分子進化 / 発生制御遺伝子 |
研究実績の概要 |
これまで包括的な解析が十分になされてこなかった系統特異的遺伝子の網羅的解析を主眼とする本課題の1年目は、必要となる材料の整備と解析方法の条件検討に注力した。本課題の核心に迫る解析の本体に着手するのは2年目であるが、この準備段階においてもすでに独自性の高い下記の成果が得られ、その結果を含めた論文発表へと進めている。 本課題では、伝統的な実験動物以外の生物にも解析を拡げることを独自性として打ち出している。それを目的とする材料の整備として、まず、のちに必要となる遺伝子発現解析のための実験系として、軟骨魚綱板鰓亜綱イヌザメ(Chiloscyllium punctatum)の胚試料を用いた発生ステージ表の作成を行い、国際専門誌に出版した(Onimaru et al., 2018. Developmental Dynamics 247: 712-723)。この生物種は、発生生物学など多様な研究で比較的多用されている他の軟骨魚種であるトラザメ(Scyliorhinus torazame)に比べて発生速度が約1.5倍であるなど、操作的な実験への有用性が高いと考えている。さらに、前年度までにすでに着手していた、このイヌザメの全ゲノムシークエンスの初版とでもいうべき配列情報の取得をひとまず完了し、ゲノム配列上のタンパク質コード遺伝子の網羅的推定を行った。現在、サメ・エイをまとめた分類群である軟骨魚綱板鰓亜綱について世界で初めての包括的なゲノム解析として出版すべく論文発表へ向けて進めている(国際誌に投稿後、査読中)。 なお、系統特異的遺伝子の網羅的解析の絞り込みに利用する計算スクリプトの事前準備など、上記以外の進行中の解析については、他の欄に記した。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
本課題で使用する材料の整備として、まず、のちに必要となる遺伝子発現解析のための実験系である、軟骨魚類イヌザメの胚試料を用いた発生ステージ表の作成を行った。さらに、イヌザメの全ゲノム配列情報の取得をひとまず完了し、ゲノム配列上のタンパク質コード遺伝子の網羅的推定を行った。 解析方法の条件検討としては、まず、新規遺伝子候補配列が実際にタンパク質をコードしているかを判定する際のヒントとなる同義置換・非同義置換数の計算パイプラインを整え、材料となる配列情報が揃った際に即座にこの部分の解析を開始する準備を完了した。さらに、そのタンパク質をコードするかの判定において最も直接的なエビデンスとなることが期待されるショットガンプロテオミクス解析のパイロットテストを行った。この種の解析は初めてであるため、生体試料からのサンプル調製と、質量分析計によるデータ取得、そして、取得データの解析のそれぞれについて、マウスの組織を題材として、技術的見地から、網羅性の高いデータが採れるよう、検討を行った。
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今後の研究の推進方策 |
脊椎動物の全ゲノム解析が各所で急速に進められているため、本研究のような他生物種を巻き込んだ網羅的な解析においては、時期を遅らせれば、それだけより精度の高い、さらに多くの種の配列情報を利用できると想定される。そのため、1年目は、あえて本筋の解析を安易にスタートせず、独自に取り組んでいるゲノム情報整備と、解析方法の最適化に敢えて取り組んだ。だが、2年目には、今後も周辺の情報は増えることを承知の上で、系統特異的遺伝子の候補を絞り込む、という本番の解析の第一ステップを遂行する予定である。これらの点以外は、当初の申請通り計画を遂行する予定である。
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