研究課題/領域番号 |
17K07428
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研究機関 | 公益財団法人東京都医学総合研究所 |
研究代表者 |
丸山 千秋 公益財団法人東京都医学総合研究所, 脳発達・神経再生研究分野, 副参事研究員 (00281626)
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研究期間 (年度) |
2017-04-01 – 2020-03-31
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キーワード | 大脳新皮質 / サブプレート / 細胞外基質 / ADAMTS2 |
研究実績の概要 |
哺乳類の大脳新皮質は、多数のニューロンが整然と6層構造内に配置されている。この極めて特異な構造基盤を祖先型哺乳類が獲得したおかげで、ヒト脳への進化を可能にしたと考えられている。サブプレートニューロンは哺乳類の発生期大脳皮質に独特の神経細胞で、視床から皮質への最初期の神経回路形成に重要な機能をしている他、最近我々は放射状神経細胞移動制御にも重要な機能を果たすことを報告した(丸山ら、Science,2018)。本年度はサブプレート層におけるシグナル伝達をさらに解明するためにサブプレート層の細胞外基質に着目して解析を進めた。 移動ニューロンの発現プロファイリングデータを解析した結果、シナプス関連以外に、細胞外基質関連のGOを持つ遺伝子も有意に変動していた。中でも細胞外基質プロテアーゼであるADAMTS2遺伝子がADAMTSファミリーの中でも移動につれてもっとも発現上昇することがわかった。そこで本プロテアーゼの移動制御への関与を調べるために、子宮内エレクトロポレーションを用いたノックダウン実験を行なったところ、移動が遅れることがわかった。次に大脳新皮質でのADAMTS2の発現領域について抗体染色及びIn situ hybridizationで確認したところ、サブプレートの下の中間帯に局在する移動中のニューロンで発現していることが明らかになった。現在ADAMTS2が、その下流のどのようなシグナル伝達経路を介して移動制御に関わっているのかについて検討を進めている。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
胎生期のサブプレートに存在する細胞外基質(ECM)の機能についてはこれまで不明だったが、移動ニューロン中にADAMTS2が発現していることから、サブプレート層におけるECMの再構築がニューロンの移動制御に重要であることが本研究から示唆された。また、ノックダウン実験によりADAMTS2プロテアーゼのニューロン移動制御への関与が明らかになった。
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今後の研究の推進方策 |
今後はその下流にどのようなシグナル経路があるのかについてさらに解析を進めていく予定である。現在のところTGFbetaの結合タンパクであるLTBP1がADAMTS2の基質である可能性を示唆する報告があるため、TGFbetaシグナルを考慮に入れて解析を進めている。
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次年度使用額が生じた理由 |
当初計画していた消耗品の購入代金が、キャンペーン価格等の適用により予定よりも安価だったため次年度に回せることとなった。そこでその分を次年度の消耗品費に充てる予定である。抗体染色のための抗体購入代金、シングルセル解析の試薬費用に充てる。また、より多くの実験を行うために実験補助員の謝金に充てる。
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