胎仔期の生殖腺は精巣にも卵巣にも分化することができる。その胎仔期生殖腺でSox9遺伝子が発現すると精巣に分化し、発現しないと卵巣に分化する。ヒトではSOX9遺伝子変異はキャンポメリックディスプラジアとなり、核型XYのキャンポメリックディスプラジア症例では約2/3で性分化疾患となる。キャンポメリックディスプラジア症例では、SOX9のコード領域に変異がなく、その上流領域に転座が見つかることもあり、SOX9遺伝子自体から離れたところにSOX9の胎仔期生殖腺でのエンハンサーが存在すると考えられている。ヒトではSOX9の上流0.6 Mbに存在するXYSRと呼ばれる32.5 kbの配列がその一つである。これまでにヒトのXYSRに相当するマウスでの配列をバイオインフォマティクスにより推定し、ゲノム編集技術とマウスをモデルに用い、XYSRの機能に重要である配列を711 bpまで絞り込んでおり、初年度にはさらに106塩基までその責任領域を絞った。今年度はさらに絞り込みを続け、9塩基にまで絞り込み、さらにその9塩基内に点変異を導入することにより、1塩基にまで絞り込むことに成功した。来年度はこの配列を含む周辺配列から結合因子の同定を実行する。この配列の生殖腺でのエンハンサーとしての機能は他のグループから報告されたが、その中の責任配列は報告されておらず、本研究により新規の分子機構の解明へと繋がると期待している。
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