現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
(1) アクチン繊維が極性を同じ方向に揃えて配向する機構の解明について: 周回型原形質流動を模倣したリング状基板において,アクチン束化因子としてメチルセルロースを加えたら,アクチン繊維はミオシンXIと相互作用しながら極性を揃えて配向しうることを明らかにした。また,基板として使う紫外線硬化樹脂Noa61は撥水性であるのでタンパク質(ミオシン)の結合性が非常に弱く,それが様々な本実験のネックとなっていたが,プラズマ処理を施すと紫外線硬化樹脂Noa61の撥水性性質が大きく改善されることがわかった。 (2) 様々な物質を特定の目的地に運ぶための専用輸送レールとしての機構の解明について: シロイヌナズナにはMYA1, MYA2, XI-A, XI-B, XI-C, XI-D, XI-E, XI-F, XI-G, XI-H, XI-I, XI-J, XI-K, AMT1, ATM2, VIIIA, VIIIBの17種のミオシンアイソフォームと,ACT1, ACT2, ACT3, ACT4, ACT7, ACT8, ACT11, ACT12の8つのアクチンアイソフォームとが存在するが,H29年度は, MYA2, XI-B, ATM1の3種のミオシンのモータードメインそれぞれについて,ACT1, ACT2, ACT7の3種のアクチンアイソフォームを基質にしたときのアクチン活性化ATP加水分解活性とアクチン滑り運動速度を測定した。その結果,ミオシンはアクチンごとに異なるATP加水分解活性とアクチン滑り運動速度を示すことがわかった。また,ACT2とACT7は植物細胞内で異なるアクチンアイソフォームとして存在することがわかった。これらのことから,ミオシンとアクチンとの相性が,「専用輸送レール」の基盤の1つとしてなりうることを見出した。 以上のように,当初の計画どおりおおむね順調に進展している。
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今後の研究の推進方策 |
(1) アクチン繊維が極性を同じ方向に揃えて配向する機構の解明について: プラズマ処理を施すと紫外線硬化樹脂Noa61の撥水性性質が大きく改善されることがわかり,多くの基板での試行が可能となった。周回型の原形質流動の細胞質を模倣したリング状基板については,リングの直径,幅を変えるなど様々なサイズを試す。さらに,逆噴水型原形質流動の細胞質を模倣した基板などさまざまな形状の基板を試し,アクチン繊維が極性を同じ方向に揃えて配向する機構の必要条件を探り,また,アクチン繊維の運動方向のキラリティーを検証する。さらに,メチルセルロースだけでなく,Villinなどnativeな束化因子も試す。以上により,アクチン繊維が極性を同じ方向に揃えて配向する機構を明らかにしていく。 (2) 様々な物質を特定の目的地に運ぶための専用輸送レールとしての機構の解明について: MYA2, XI-B, ATM1の3種のミオシンのモータードメインそれぞれについて,ACT1, ACT2, ACT7の3種のアクチンアイソフォームについて親和性の違いを明らかにする。GFPを遺伝子的に付加したミオシンを, Cy3およびCy5の異なる蛍光色素で標識した2種類の異なるアイソフォームを低濃度ATP存在下で混合し,一定時間後に,蛍光顕微鏡で観察し,どちらのアクチンアイソフォームに結合するか調べる。また,アクチン活性化ATP加水分解活性,アクチン滑り運動速度,親和性の検証はMYA2, XI-B, ATM1以外の14種のミオシンおよび,ACT1, ACT2, ACT7以外の8種のアクチンアイソフォームについても順次行なっていく。
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