顕花植物のタバコの葉緑体ゲノムのうち、12種のタンパク質をコードする遺伝子はイントロンを含む。菌類ミトコンドリアのイントロンの分類によれば、グループⅡ型である。顕花植物の葉緑体のグループⅡ型イントロンはセルフ-スプライシングしないので、タンパク質因子の関与が考えられる。 タバコ葉緑体のH+-ATPアーゼのサブユニットCF1アルファをコードするatpF遺伝子のイントロン2次構造モデルを作成し、エキソン結合部位(EBS1とEBS2)を探索した。更に、ホウレンソウ、エンドウ、イネとシロイヌナズナのatpFイントロンの2次構造もあわせて作図した。それぞれのイントロンのエキソン結合部位(EBS1とEBS2)も推定した。 タバコ葉緑体のatpFイントロンの推定したEBS1とEBS2につき、変異を導入し、我々が開発したタバコin vitroスプライシング系で調べた。その結果、推定したEBS1が正しいことを示した。EBS2は、スプライシングの効率を高めることを示した。 In vitro系でスプライスされたmRNAを抽出して、それぞれの配列を調べたところ、正しい位置でイントロンが除去され、両エキソンが結合されていることを明らかにした。従って、我々のin vitro系は葉緑体内の反応を正して反映していると考えられる。また、3‘エキソンの末端の塩基(U)を、変異を導入して調べ、この位置の塩基はスプライシングに影響しないことを見いだした。AtpF イントロンは、6個のドメインよりなる。ドメインIIとドメインIII とドメインIVの先端部分を、かなり欠失させてもスプライスされる事を見出した。 また、イントロンが分断されているリボソーム蛋白S12をコードするrps12遺伝子も、in vitro系で解析するため、このイントロンの2次構造モデルを作成し、必要なRNAも合成し、予備的な解析も進めた。
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