研究課題/領域番号 |
17K07443
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研究機関 | 名古屋大学 |
研究代表者 |
高橋 宏二 名古屋大学, 理学研究科, 助教 (40283379)
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研究期間 (年度) |
2017-04-01 – 2020-03-31
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キーワード | 細胞膜H+-ATPase / リン酸化 / FRET |
研究実績の概要 |
本研究は、顕花植物のモデル生物であるシロイヌナズナを実験材料として、植物細胞内外のpH調節や膜電位制御を介したイオン等の二次輸送体の活性を担う細胞膜H+-ATPase(プロトンポンプ)の活性状態を可視化する技術を確立し、植物の生活環全般にわたる細胞膜プロトンポンプ機能のプロファイルを明らかとするとともにその活性制御機構を明らかにすることを目的として実施している。陸上植物の細胞膜プロトンポンプはC末端から2番目のアミノ酸であるスレオニン残基のリン酸化とそのリン酸化部位と14-3-3タンパク質との相互作用により活性調節されている。そこで、リン酸化された細胞膜プロトンポンプと14-3-3タンパク質の二分子間相互作用を利用した蛍光共鳴エネルギー移動(FRET)などによる可視化技術を適応することとした。本年度は、FRETのドナータンパク質として用いる緑色蛍光タンパク質(GFP)の二量体化によるGFP融合細胞膜プロトンポンプのアーティファクトな複合体構造をとることを避けるためにQ69MとA206Kに変異を導入した単量体型GFPを融合した細胞膜プロトンポンプと、FRETのアクセプタータンパク質として用いる各種蛍光タンパク質と融合した14-3-3タンパク質のコンストラクトを作成した。これらのコンストラクトを植物細胞プロトプラストで一過的共発現をおこない、GFP融合細胞膜プロトンポンプの挙動を調べるとともに、細胞膜プロトンポンプの活性化状態とFRETの効率について検討をおこなった。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
シロイヌナズナの細胞膜H+-ATPaseのひとつであるAHA1(Arabidopsis H+-ATPase1)と単量体GFP(Q69MとA206Kの変異を導入)との融合タンパク質、および14-3-3タンパク質(GF14phi)と各種蛍光タンパク質(mCherry、mOrange、DsRed、mStrawberry、mRaspberryなど)との融合タンパク質作出のためのベクターを構築した。葉緑体プロトプラストを用いた一過的発現系を利用して、これら融合タンパク質を発現させ、GFP融合によるAHA1のリン酸化制御への影響とAHA1の活性化にともなうFRETの検出を行った。GFPをN末に付加したAHA1では当初の期待通り概ねリン酸化制御に影響はみられなかった。一方、FRETの効率は必ずしも高いとは言えなかったため、植物体における細胞膜H+-ATPaseのライブイメージングを実現するためにはFRET効率をより高める必要があり、その改良を試みているところである。
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今後の研究の推進方策 |
今後も概ね計画通りに研究を推進する予定であるが、単量体GFP融合細胞膜H+-ATPaseと各種蛍光タンパク質融合14-3-3タンパク質との二分子間相互作用を検出するためFRETの効率を高めるため、FRETに用いる蛍光タンパク質(ドナータンパク質とアクセプタータンパク質)の組み合わせを検討するとともに、蛍光タンパク質と細胞膜H+-ATPaseおよび14-3-3タンパク質との間のリンカー配列の長さや性質を検討する。ドナータンパク質を融合することにより細胞膜H+-ATPaseの機能や細胞内局在への影響が現れないかどうかについても慎重に検討する。一方で、ドナータンパク質とアクセプタータンパク質とのFRETによる相互作用検出以外にも、細胞膜H+-ATPaseと14-3-3タンパク質との相互作用を利用した細胞膜H+-ATPase活性の可視化という基本原理は維持したまま、GFPの円順列変異体の両端に細胞膜H+-ATPaseと14-3-3タンパク質を融合することによって作成した一分子センサーなどについても検討することとする。一過的発現系で有効性が確認されたバイオセンサーを植物体内で発現させ、植物体における細胞膜H+-ATPase活性のバイオイメージングを実現し、さらにはバイオイメージングを指標にした細胞膜H+-ATPaseの活性制御機構解明のツールを完成させる予定である。
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次年度使用額が生じた理由 |
消耗品の購入を予定していたが、年度内の納品が難しいため当該年度での購入を見送った。次年度使用額を用いて同等の消耗品の購入を行う予定である。
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