細胞壁を持つ植物の細胞は移動することができないため、細胞の非対称分裂と分化による細胞運命は密接な関係のもと、厳密に制御されている。根端分裂組織の形態形成(パターン形成)においてはGRASファミリータンパク質SCR、SHRが転写制御によって中心的な役割を果たしている。GRASファミリータンパク質SCR、SHRの立体構造解析およびSCR、SHRと転写因子IDDファミリーの三者複合体の構造解析も行い、GRASファミリーは転写因子IDDのコファクターであり、SCR-SHR-IDD三者複合体が根の成長を制御する転写因子複合体として機能していることを示した。最近、興味深いことにジベレリン依存的な根の形態形成に関与するGRASファミリーDELLA、SCL3もIDDと相互作用することが報告された。しかし、SHR-SCR複合体はIDDのZincFinger領域と相互作用するのに対して、DELLA、SCL3のGRASドメインはZincFinger領域ではなく、C末端側の領域で相互作用する。このことから、DELLA、SCL3によるIDDタンパク質の認識・制御機構はSHRによるものとは異なることが強く示唆される。そこで本研究ではGRASファミリーと転写因子IDDファミリーの相互作用に着目して、異なるIDD相互作用様式をもつと示唆されるGRASファミリー間の相互関係を構造生物学的・生化学的に明らかにすることで、これまでの研究を発展させ、より詳細な転写制御の分子機構解明を目指す。 本年度はSCL3とIDDファミリーのX線結晶構造解析と相互作用の生化学的解析を中心に研究を進めた。前年度に得られたSCL3とIDDタンパク質複合体結晶から得られたX線回折データに基づいて複合体の立体構造を決定した。また相互作用様式を明らかにして、これに基づいた変異体を作成して相互作用解析を行った。
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