研究課題/領域番号 |
17K07449
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研究機関 | 広島大学 |
研究代表者 |
深澤 壽太郎 広島大学, 理学研究科, 助教 (90385550)
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研究期間 (年度) |
2017-04-01 – 2020-03-31
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キーワード | ジベレリン / 転写因子 / 信号伝達 |
研究実績の概要 |
ジベレリン(GA)信号伝達においてDELLAタンパク質は、抑制因子として知られている。DELLAは、機能未知の核タンパク質であり下流の信号伝達を抑制している。GA依存的にDELLAタンパク質が速やかに分解され抑制が解除されることでGA応答が誘引される。DELLAタンパク質の相互作用因子として転写因子GAF1の単離に成功しDELLAタンパク質が、GAF1と相互作用することによって、下流の標的遺伝子の制御を行っていることを明らかにしてきた。GAF1は、さらにコリプレッサーであるTOPLESS様タンパク質TPRと相互作用することを明らかにし、DELLAタンパク質はコアクチベーターとして、TPRはコリプレッサーとして機能することが明らかとなった。GAは、DELLAの分解を介して、GAF1複合体をアクチベーターからリプレッサーに変換することで、標的遺伝子の発現を調節している。本研究課題において、植物体内におけるGAF1の翻訳後修飾の有無を検討するため、mycタグを付加したGAF1タンパク質発現する形質転換植物を作製した。myc抗体を用いたウェスタンブロット解析、Phos-tagゲルを用いた解析などより、特定のバンドシフトが検出されることからGAF1タンパク質が植物体内でリン酸化修飾を受けている可能性が示された。GAF1内のリン酸化予想部位に変異を導入した変異型GAF1を発現する形質転換植物を作製し、リン酸化の有無を検証した。詳細なアミノ酸置換の解析より、GAF1タンパク質はリン酸化されること、リン酸化部位が複数存在することを明らかにした。さらに、GAF1に結合する新たな因子を同定した。新たな相互作用因子は、DELLA-GAF1の転写活性化に対し促進的な影響を示すことが明らかになった。これらの因子の結合部位や、どのようにして、DELLA-GAF1の転写活性化能への影響を検証している。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
GAF1内に存在する、リン酸化予想部位にアミノ酸置換を導入しリン酸化部位を同定した。その結果、GAF1のリン酸化部位は複数存在することが明らかとなった。また、新たな相互作用因子の機能を調べる為、DELLA-GAF1の転写活性化能に着目して解析を行ったところ新たな相互作用因子によりDELLA-GAF1の転写活性化能が強くなることが明らかとなった。
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今後の研究の推進方策 |
新たな相互作用因子を導入することによって、DELLA-GAF1の転写活性化能が増大する原因として、新しい因子自体が強い転写活性化能を有している可能性や、DELLA-GAF1の相互作用を促進する可能性などが考えられる。相互作用因子が、どのようにしてDELLA-GAF1の転写活性化能を強化できるのかを検証する。また、同定したGAF1のリン酸化修飾部位に変異を導入し、リン酸化されない変異型GAF1及び、リン酸化を模した変異型GAF1を発現する形質転換体を作製し、GAF1のリン酸化修飾部位の生理学的意義を検証する。
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次年度使用額が生じた理由 |
H31年度は、申請者は、大学院生とともに研究を進める。新たに同定した相互作用因子の機能解析を中心に分子生物学的な研究に使用する消耗品に多くを投入する。また一部を学会等の出張費、論文投稿費に使用予定である。
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