研究課題
光合成光化学反応は水を電子供与体とし、高い還元力を生む光で駆動する反応である。クロロフィルには多様性が存在し、酸素発生型光合成でもっとも低エネルギー側に吸収極大をもつものはクロロフィルfと呼ばれ、ある種のシアノバクテリアがこれを持っている。クロロフィルfは常に合成されているわけではなく、培養光が700 nm以上の遠赤色光下において全クロロフィル量の約10%発現する。高い還元力を生み出す、光化学系Iは約100分子のクロロフィルが結合している。ほとんどのクロロフィルは希薄な太陽光を濃縮するためのアンテナとして機能するが、クロロフィルfを結合した光化学系Iの初期電子供与体のクロロフィルはクロロフィルaであり、クロロフィルfより高エネルギー側に吸収極大を位置しているが、これはエネルギー濃縮の点でエネルギー的に不利である。本研究ではクロロフィルfを結合した光化学系I標品をシアノバクテリアから生化学的に単離精製を行い、それに対してクライオ電子顕微鏡による構造解析を行った。2.4Åの分解能で構造を明らかにした結果、光化学系Iあたり83分子のクロロフィルaと7分子のクロロフィルfの位置を明らかにした。ほとんどのクロロフィルfは互いに近接しており、また低エネルギー側に吸収極大をシフトしたクロロフィルaも近傍に位置することが示唆された。これは低エネルギー側に吸収帯をもつクロロフィルが近接することによりエネルギーをシェアすることにより、初期電子供与体に向かってエネルギー移動していることを意味しており、新規クロロフィルを用いたエネルギー変換機構の一部が明らかとなった。
すべて 2020 2019
すべて 雑誌論文 (3件) (うち国際共著 3件、 査読あり 3件、 オープンアクセス 3件) 学会発表 (4件) (うち国際学会 2件、 招待講演 2件)
Nature Communications
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