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2017 年度 実施状況報告書

次世代型シーケンサーを用いた種子油脂貯蔵プログラムの発芽後抑制メカニズムの解析

研究課題

研究課題/領域番号 17K07454
研究機関中部大学

研究代表者

鈴木 孝征  中部大学, 応用生物学部, 講師 (50535797)

研究期間 (年度) 2017-04-01 – 2020-03-31
キーワード次世代型シーケンサー / RNA-Seq / スプライシング / 油脂合成 / シロイヌナズナ
研究実績の概要

本研究はシロイヌナズナが種子に油脂を蓄積する遺伝的なしくみを明らかにし、植物を利用した油脂の生産性を向上することを大きな目的としている。その過程で、未熟種子で活性化している油脂を蓄積するための遺伝子が発芽後に抑制されることに着目し、drol1変異株を単離した。drol1変異株では発芽後に発現が抑制されるオレオシン遺伝子の発現が持続していることがわかり、発芽後の種子形成プログラムを抑制するメカニズムに必須の遺伝子であることが期待された。Drol1はスプライシング因子をコードしており、どのような遺伝子のスプライシングを行っているのかに興味を持ち研究を始めた。
DROL1がスプライシングを促進する遺伝子を探すために、次世代型シーケンサーNextSeq500を用いてRNA-Seqを行った。野生型株、drol1-1、drol1-2変異株からRNAを抽出し、cDNAライブラリを作成した。シロイヌナズナが持つ約12万のイントロンの発現を調べたところ、drol1-1において132個、drol1-2において62個のイントロンがスプライシングされていないことがわかった。drol1-2の62個のイントロンのうち55個(88%)はdrol1-1でもスプライシングされておらずdrol1-1のほうが広範囲な影響を与えていることがわかった。drol1-1でスプライシングされなくなった132個のイントロンのうち37個はその末端の塩基配列がGT-AGでなく、DROL1は非GT-AG型のイントロンのスプライシングに必要な因子であることがわかった。
drol1変異株でスプライシングされなくなった遺伝子の中に3個のヒストン脱アセチル化酵素(HDAC)をコードしているものがあった。いずれも末端がAT-ACのイントロンを一つだけもち、そのイントロンのみがスプライシングされなくなっていることがわかった。

現在までの達成度 (区分)
現在までの達成度 (区分)

2: おおむね順調に進展している

理由

申請した計画では平成29年度に主にRNA-Seq用のサンプルの収集とライブラリの作成を行うとなっており、おおむねこれを実施した。これまでに野生型株、drol1-1変異株、drol1-2変異株、hd2b変異株、hd2c変異株からRNAを抽出し、ライブラリの作成を行った。またヒストン脱アセチル化酵素の阻害剤であるトリコスタチンAを処理したサンプルも用意し、ライブラリを作成した。作成したライブラリは順次シークエンスを行っており、順調にデータの蓄積を進めている。研究の概要に記したように発現量の変化した遺伝子の同定、スプライシング効率の定量化も行うことができており、おおむね計画通りに進捗している。
DROL1の時空間的な発現パターンを解析するためにDROL1プロモーターの下流にGUSレポーター遺伝子をつないだ遺伝子を作成し、シロイヌナズナへの導入をすすめている。合わせてHD2B、HD2CがもつAT-ACイントロンの役割を明らかにするべく、これらのイントロンをGUS遺伝子につないだ融合遺伝子を作成し、シロイヌナズナへ導入する実験をすすめている。これらのコンストラクトづくりは計画よりも遅れており、形質転換体の作成までは至っていない。

今後の研究の推進方策

本研究の立案時にはDROL1の欠損によるHDACの翻訳阻害がdrol1変異株の表現型の大きな理由になっているものと期待していた。しかしHDACの変異株を用いたRNA-Seqの結果ではhd2bおよびhd2c変異株で発現量が変化している遺伝子はかなり重なっているものの、drol1変異株とはかなり異なっていることがわかった。またオレオシン遺伝子の発現がhd2bおよびhd2c変異株で脱抑制していないこともわかった。これらのことからdrol1変異株で発現が上昇している遺伝子のうちHD2BまたはHD2Cの活性低下によるものはあまり多くないことが推測された。今後こhd2b, hd2cの二重変異株の作成を試みるとともに、残りのAT-ACイントロンを持つHDACにも注目した研究を行う。
オレオシン遺伝子の上流にアセチル化したヒストンが結合しているかどうかを調べるためにChIP-Seqの実験を行う。使用する抗体を選択するために行った予備的な実験ではdrol1変異株ではオレオシン遺伝子のプロモーターにより多くのアセチル化ヒストンが結合しているデータが得られた。今後サンプル数を増やすとともに、RNA-Seqの解析結果と合わせたデータの検討を行い、オレオシン遺伝子の発現抑制とHDACの関係を明らかにしていく。

次年度使用額が生じた理由

試薬および消耗品の実際の価格と予算に差があったため。次年度の予算と合わせて研究の推進に必要な試薬および消耗品に使用する。

  • 研究成果

    (2件)

すべて 2018

すべて 雑誌論文 (1件) 学会発表 (1件)

  • [雑誌論文] Development of the Mitsucal computer system to identify causal mutation with a high-throughput sequencer2018

    • 著者名/発表者名
      Suzuki Takamasa、Kawai Tsutae、Takemura Shunsuke、Nishiwaki Marie、Suzuki Toshiya、Nakamura Kenzo、Ishiguro Sumie、Higashiyama Tetsuya
    • 雑誌名

      Plant Reproduction

      巻: 31 ページ: 117~128

    • DOI

      10.1007/s00497-018-0331-8

  • [学会発表] シロイヌナズナ による特異的なスプライシングが発芽後の種子油脂貯蔵プログラムの抑制に必要である2018

    • 著者名/発表者名
      鈴木 孝征、河合 都妙、上田 実、関 原明、東山 哲也、 中村 研三
    • 学会等名
      第59回日本植物生理学会年会

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公開日: 2018-12-17  

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