研究課題/領域番号 |
17K07454
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研究機関 | 中部大学 |
研究代表者 |
鈴木 孝征 中部大学, 応用生物学部, 准教授 (50535797)
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研究期間 (年度) |
2017-04-01 – 2020-03-31
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キーワード | U12型スプライソソーム / スプライシング / U5 snRNA / シロイヌナズナ / 遺伝子発現制御 |
研究実績の概要 |
2018年度はDROL1遺伝子の機能の解析をするとともに、それによって触媒されるAT-AC型イントロンの機能の解明を目指した研究を行った。 DROL1のスプライシングにおける役割を調べるために、そのホモログを調べた。データベースを検索したところ、酵母のDIB1と類似していることを見つけた。DIB1はスプライシング装置であるスプライソソームに含まれるU5 snRNAに結合するタンパク質であることが報告されており、DROL1も同様の機能を持つことと推測した。一方、シロイヌナズナのゲノム中にはDIB1により近いホモログが存在していることがわかった。様々な生物のデータを検索したところ、イネ、ヒメツリガネゴケ、ヒトおよびマウスにはシロイヌナズナと同様に2つ以上のホモログが存在しており、DIB1型とDROL1型のそれぞれがあった。一方、酵母、線虫(C. elegance)、コナミドリムシにはDIB1型のみがあることがわかった。文献を調べると酵母と線虫には末端の塩基配列がAT-ACであるイントロンをスプライシングするU12型スプライソソームが存在しないことがわかった。昨年度までにdrol1変異株でAT-AC型イントロンのスプライシングが特異的に抑制されていることがわかっており、これらを総合するとDROL1はU12型スプライソソームに含まれるU5 snRNAに結合する因子ではないかと推測した。 HD2BおよびHD2Cの3番目のイントロンはAT-AC型であり、drol1変異株でそのスプライシングが抑制されていることを昨年度までに明らかにした。このイントロンが遺伝子の発現に及ぼす影響を調べるために、プロモーターから3番目のエキソンの3’側までをGFPにつないだコンストラクト(HD2Bp3e::GFP)と、4番目のエキソンの5’側までをRFPにつないだコンストラクト(HD2Bp4e::RFP)を作成し、シロイヌナズナに導入した。GFPとRFPの発現には差があり、AT-AC型イントロンの有無によって遺伝子の発現が変化することが示唆された。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
申請した計画では平成30年度にデータの解析およびDROL1遺伝子の発現パターンの解析を行うとなっている。データの解析によりDROL1がスプライシングを担うイントロンはすでに同定済みで、本年度はDROL1の遺伝子の構造の分析を進めた。計画にはなかったがDROL1のホモログの解析から翻訳開始点を調べる重要性に気づき、これを確かめる実験を計画して実施中である。 DROL1の発現パターンを調べるコンストラクトを作成し、植物に導入した。GUSプロモーターを使って発現する組織を同定するとともに、GFP融合タンパク質を発現させて細胞内局在を調べることもできた。
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今後の研究の推進方策 |
ホモログの分析によりDROL1のスプライシングにおける役割が見えてきた。本年度見出したAT-AC型イントロンによる遺伝子発現制御のデータとともに論文発表を行うべく、原稿の作成をすすめながら、翻訳開始点を同定する実験を行う。
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次年度使用額が生じた理由 |
計画ではChIP-Seqを行うところであったが、hd2b、hd2c変異株の解析結果が当初の期待と違っていたため、オレオシン遺伝子の発現とヒストン修飾の関連を調べる優先度が下がったので実施しなかった。今後U12型イントロンが遺伝子発現に及ぼす影響を調べる実験に予算を使用する。
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