研究課題
真核細胞に必須のオルガネラであるペルオキシソームは、脂肪酸代謝などの共通の機能に加え、植物では光呼吸系、酵母ではアルコール発酵、動物では胆汁酸の生合成といった生物種に特異的な機能をもつ。これらの機能は、進化の過程で生物種に応じて獲得されてきたと考えられるが、これまでの植物ペルオキシソームの研究は、主にモデル被子植物のシロイヌナズナを中心に行われ、他の植物における知見はほとんどなかった。本研究では、基部陸上植物であるゼニゴケと、シロイヌナズナとは異なる生活様式をもつ非モデル植物のギンリョウソウとオロバンキを実験材料とし、ペルオキシソームの機能と形成に関わる因子の同定と機能解析から、植物ペルオキシソームの機能と形成の多様性、および適応性の獲得機構の解明を目指す。平成29年度は、ギンリョウソウのRNA-seqのデータのインフォマティクス解析を行い、論文作成を進めた。オロバンキについては、前年度までに取得したRNA-seqによる発現データ解析を用いた解析を進めた。ゼニゴケについては、解析ツールの整備として進めてきた、プロモータースワッピング可能なGateway 技術を用いた新規ベクターの開発を継続し、R4pMpGWBシリーズとR4L1pMpGWBシリーズから成る76種類のDestination vectorを作製した。それらベクターの有効性の検証を行うため、GUS、ルシフェラーゼ、核局在型Citrine、小胞体局在型Citrineを熱誘導性プロモーターや恒常的に発現させるプロモーターにつなげ、それら融合遺伝子を発現する形質転換ゼニゴケを作製し、GUS染色、ルシフェラーゼ発光、Citrineのイメージング解析を行った。
2: おおむね順調に進展している
ゼニゴケにおいては、蛍光タンパク質にペルオキシソームを可視化させたラインを用いて、二重免疫染色法により導入した遺伝子産物の局在を検証した。この可視化した形質転換体を親株として、インフォマティクス解析で同定した因子の機能破壊株の作製し、作製できたものから表現型やペルオキシソーム動態の解析を進めている。また、ゼニゴケ用のGateway vectorを作製し、本研究室および他の研究室でも検証を行い、その有効性を確認できたため、現在論文作成を進めている。ギンリョウソウについては、既に論文として取りまとめ、現在投稿中である。オロバンキについては、様々な成長段階より調整したRNAを使ったRNA-seqを行い、そのデータ解析を進めている。
ギンリョウソウについては、論文の受理までもっていく。オロバンキは、インフォマティクス解析を進め、論文作成を開始する。ゼニゴケについては、CRISPR/Cas9によりペルオキシソーム機能に関わる遺伝子機能が破壊されたものが作成できているので、表現型やペルオキシソーム動態の解析を進めると共に、他の因子についても同様の系で機能破壊株の作製を継続する。
研究代表者は、平成29年度の11月に准教授に昇進し、それに伴い12月後半から研究室の改築を行った。新たな研究室のセットアップ等に時間がかかってしまったたことと、研究を補助する支援員が都合により勤務時間を減らすことになったため、経費の使用が当初の予定より異なることとなった。研究室のセットアップは概ね終了し、研究は順調に進み始めたので、本来、平成29年度に使用予定であった経費の一部を次年度に使用することで、本研究課題をさらに発展させていく。
すべて 2017
すべて 雑誌論文 (3件) (うち査読あり 3件) 学会発表 (5件) (うち国際学会 3件、 招待講演 2件)
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