研究課題
真核細胞に必須のオルガネラであるペルオキシソームは、脂肪酸代謝や活性酸素種の除去などの共通の機能に加え、植物では光呼吸、酵母ではアルコール発酵、動物では胆汁酸の生合成といった生物種に特異的な機能を併せもつ。これらの機能は、進化の過程で生物種に応じて獲得されてきたと考えられる。これまでの植物ペルオキシソームの研究は、主にモデル被子植物のシロイヌナズナを中心に行われ、他の植物における知見はほとんどなかった。本研究では、基部陸上植物であるゼニゴケと、シロイヌナズナとは異なる生活様式をもつ非モデル植物のギンリョウソウとオロバンキを実験材料とし、ペルオキシソームの機能と形成に関わる因子の同定と機能解析から、植物ペルオキシソームの機能と形成の多様性、および適応性の獲得機構の解明を目指す。平成30年度は、ギンリョウソウのRNA-seq解析の論文の再投稿と、オロバンキのRNAseqによる発現データを用いた解析を進めた。ゼニゴケについては、解析ツールの整備として進めてきた、プロモータースワッピング可能なGateway 技術を用いた新規ベクターの開発を継続し、R4pMpGWBシリーズとR4L1pMpGWBシリーズから成る76種類のDestination vectorを作製し、それらベクターの有効性の検証を行い、論文として発表した。その過程で作製したPeroxisome targeting signal (PTS) 1とPTS2との融合遺伝子を発現する軽質転換ゼニゴケの解析から、陸上植物が分化した段階で既にPTS1輸送系とPTS2輸送系が獲得されていたことが明らかとなった。
3: やや遅れている
ゼニゴケにおいては、76種類のゼニゴケ用のGateway vectorを作製し、本研究室および他の研究室でも検証を行い、その有効性を確認でき論文として発表することができた。その中で作製したペルオキシソームが可視化された形質転換ゼニゴケの解析から、進化過程におけるペルオキシソームタンパク質輸送経路の知見を得ることができた。ギンリョウソウについては、論文として投稿したものの、再投稿となってしまったため、修正稿を共著者とともに作成している。オロバンキについては、様々な成長段階より調整したRNAを使ったRNA-seqを行い、そのデータを解析中である。
ギンリョウソウについては、論文の受理までもっていく。オロバンキは、インフォマティクス解析を進め、論文の作成を開始する。ゼニゴケについては、CRISPR/Cas9によりペルオキシソーム機能に関わる遺伝子機能が破壊されたものが作成できているので、表現型やペルオキシソーム動態の解析を進める。
研究代表者は、平成30年4月より新たな研究室として「オルガネラ制御研究室」を主宰することとなった。それに伴い、平成30年12月より研究室の拡張を行うこととなり、工事が3月までかかってしまったため、一時的に予定していた研究の一部を中断することとなった。平成30年度に使用予定であった経費の一部は、工事による研究の一時中断により使用しなかったため、次年度に研究補助員の雇用経費や学会発表の旅費、論文投稿料に使用することで本研究課題を継続し、年度の後半では成果のとりまとめを行う。
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PLOS ONE
巻: 3 ページ: e0204964
10.1371/journal.pone.0204964
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