研究課題/領域番号 |
17K07466
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研究機関 | 埼玉大学 |
研究代表者 |
小林 哲也 埼玉大学, 理学部, 教授 (00195794)
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研究分担者 |
菊山 榮 早稲田大学, 教育・総合科学学術院, 名誉教授 (20063638)
菅沼 雅美 埼玉大学, 理工学研究科, 教授 (20196695)
岩室 祥一 東邦大学, 理学部, 教授 (70221794)
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研究期間 (年度) |
2017-04-01 – 2020-03-31
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キーワード | 抗菌ペプチド / ウズラ / ファブリキウス嚢 / 腎臓 / β-Defensin / 活性型ビタミンD3 / Cathelicidin-B1 |
研究実績の概要 |
本研究は、抗菌ペプチド(AMPs)が有する多機能性の解析と、内分泌因子や飼料成分等によるAMPsの発現調節並びに発現調節機構の解析を通して、鳥類の自然免疫機能を人為的に向上させる方法の基盤について検討することを目的としている。 脊椎動物のAMPsには2種のファミリー(CathelicidinとDefensin)が知られている。ニワトリではCathelicidinに属するAMPsとして4種類が同定されており、このうちCathelicidin-B1(CATH-B1)は、B細胞の分化・増殖に関わるファブリキウス嚢(BF)において強く発現していることが報告されている。本年度は二ホンウズラBFからCATH-B1 cDNAをクローン化し、cRNAプローブを作成してCATH-B1 mRNAの発現部位について調べた。加えて、cDNAの情報に基づいて合成したウズラCATH-B1ペプチドを用いて生理活性についても検討した。その結果、CATH-B1 mRNAはBFの濾胞間上皮と髄質内で強く発現していること、そのmRNA発現は動物へのグラム陰性菌内毒素(リポ多糖;LPS)投与により高まること、加えて合成ペプチドは大腸菌(グラム陰性菌)に対して抗菌活性を示し、さらにLPS結合活性とLPS中和活性を有することが明らかになった。 また、鳥類の腎臓は尿管を介して総排泄腔に連続していることから、外界微生物の侵入を受けやすいと考え、腎臓におけるβ-Defensin(BD)の発現について検討した。その結果、ウズラ腎臓では、BD9 mRNAは遠位尿細管と一部の集合管で、BD10 mRNAは両者で、それぞれ発現していることを明らかにした。また、ウズラ腹腔内への活性型ビタミンD3の投与は、腎臓におけるBD10 mRNAの発現を有意に増加させることが明らかになった。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
本年度は、A】AMPsの多機能性の解析と、B】AMPs遺伝子の発現調節機構の解析、に関して検討し、A】では、ウズラのAMPsであるCathelicidin-B1には、抗菌活性に加え、LPS結合活性とLPS中和活性を有すること等を示した。また、B】では、活性型ビタミンD3が腎臓におけるAMPs β-Defensin-10の mRNA発現量を有意に増加させること等を示した。これらのことから、(2)おおむね順調に進展していると判断した。
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今後の研究の推進方策 |
平成30年度は、抗菌ペプチド(AMPs)のもつ多機能性と発現調節機構について検討する。 多機能性では、抗ウイルス作用と抗腫瘍作用について評価する。細菌と最も接しやすい部位は、口腔、消化管(胃、腸管等)、肺、皮膚等であることから、これら部位由来の腫瘍細胞株をAMPsで処理し、がん細胞の生存率あるいはアポトーシス誘導等に与える影響について評価する。 また、発現調節機構に関しては、活性型ビタミンD3 に加え脂肪酸がAMPs発現に与える影響を検討する。ビタミンD3に関しては、動物あるいは培養細胞を活性型ビタミンD3で処理し、AMPsのmRNA 発現に与える影響についてリアルタイムPCR(qPCR) 法により測定する。一方、脂肪酸には様々な種類が存在することから、本研究では、動物の体内に存在する短鎖脂肪酸(ブタン酸 等)、中鎖脂肪酸(オクタン酸 等)、長鎖脂肪酸(オクタデカン酸等)等で動物あるいは培養細胞を処理した後、上記ビタミンDの場合と同様に解析する。 シグナル伝達機構の解析では、LPS、グラム陽性菌内毒素(リポテイコ酸;LTA)、ホルモン、活性型ビタミンD3、脂肪酸等がAMPs遺伝子の発現を高める場合、その際の細胞内シグナル伝達機構について解析する。組織あるいは培養細胞における各因子受容体の存在をRT-PCR 法により確認する。併せて、受容体の存在部位を免疫組織学的手法あるいはin situ hybridization 法を用いて同定する。さらに細胞内の炎症応答性シグナル伝達系に関わる分子(NFκB, MAPK 等)の阻害剤や活性化剤がAMPsのmRNA 発現に与える影響を、qPCR 法により測定し、どのシグナル伝達機構が関与しているか評価することで、各因子の受容体結合から炎症応答までの経路を解明することを目指す。 0
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次年度使用額が生じた理由 |
理由:本年度、研究が順調に進んだことにより、条件検討などの実験回数が少なく済んだこと、また、割安なキャンペーン品を積極的に購入したこと、等の理由により、当初の計画よりも少ない費用で実験を行うことができたため、未使用額が生じた。
使用計画:今後は、結果が全く予想できない実験も計画していることから、追加実験等が必要となることが見込まれるため、今期生じた未使用額をそれに充てることを考えている。
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