研究実績の概要 |
本年度は、内分泌因子や飼料成分等による抗菌ペプチド(AMPs)の発現調節並びに発現調節機構の解析を通して、鳥類の自然免疫機能を人為的に向上させる方法の基盤について検討することを目指した。脊椎動物のAMPsには2種のファミリー(Defensin)と(Cathelicidin:ニワトリでは4種が同定)が存在するが、本年度は二ホンウズラのファブリキウス嚢(BF)とハーダー腺(HG)における4種のCathelicidinのmRNA発現に対する飼料成分の効果について検討した。 生体が腸管内に有する腸内細菌は、食物繊維を発酵することで短鎖脂肪酸(SCFA)を産生する。近年、Taylar(2016年)ら研究により、腸管内で産生されたSCFAは、腸上皮において免疫応答に関わるサイトカインの産生を制御することで免疫系に関与することが示された。一般に、SCFAは腸内環境を弱酸性に保ち悪玉菌や病原菌の活性化や増殖を抑えているが、腸管で産生され血管に吸収されたSCFAが、腸以外の器官で免疫機能を調節するかは不明である。そこで、自然免疫系において働くAMPsの発現を指標に、ウズラの免疫器官(BFやHG)におけるAMPsの発現に対するSCFA投与の効果を解析した。 ウズラのHGとBFでは、複数種のAMPs(Cath-B1, Fow-1, Fow-2, Fow-3)のmRNA発現が確認された。そこで、動物にSCFA(脂肪酸のうち炭素数2~5のもの)の一種である酪酸(炭素数3)を与え、Cath-B1等のmRNA発現に対する効果を調べた。その結果、酪酸投与により Cath-B1のmRNA発現が有意に増加した。また、HGとBFではSCFAをリガンドとするFFAR2受容体のmRNA発現も確認された。従って、投与された酪酸は免疫器官におけるFFAR2受容体に結合し、AMPsのmRNA発現を誘導したと推定される。
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