研究実績の概要 |
(1)子葉細胞内でのリピッドボディの消失調節機構 細胞内のリピッドの残存量を数値として捉えるためにラボアッセイトリグリセライド(Wako純薬)を用いて、発芽後の実生内リピッド量の挙動を調べた。野生株においては、暗所生育3日目における培地へのショ糖添加の有無による違いと、その後の光照射開始によるリピッドの減少速度の違いを調べた。また、リンゴ酸合成酵素の遺伝子に欠損があるためにグリオキシル酸回路が機能不全となっていると考えられる株(ms)とオートファジー機能が欠損している株(atg2,atg5)について、暗所生育期間でのリピッドの減少量の野生株との違いや光照射後のリピッドの減少速度を調べた。その結果、暗所生育期間でのリピッドの減少にはグリオキシル酸回路を経由するペルオキシソームによる代謝が主に機能していることが示された。一方、光照射後のリピッドの減少については、グリオキシル酸回路を経由するペルオキシソームの機能に加えて、それとは異なる他の機能が関与している可能性が強く示唆され、それがオートファジーである可能性も示された。しかし、オートファジー欠損株の胚には、貯蔵脂肪としてのリピッドがほとんど蓄積していないことが明らかとなり、オートファジーの関与を証明するにはさらなる検証が必要である。 (2)緑藻細胞内におけるリピッドボディの消失機構 窒素飢餓で形成されるリピッドボディとオートファゴゾームとの関係を調べるためにリピッド染色試薬(Lipi-Blue)とオートファジー検出試薬との2重染色をおこなった。その結果、リピッドボディーがオートファジーによってオートファゴソームに包まれる可能性が示唆された。そこで、飢餓細胞を電子顕微鏡で詳しく解析した。その結果、多くの小胞がリピッドボディの膜と融合している像がいくつか見られた。このことは、オートリソソームの形成を意味していると考えている。
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