最終年度はバソトシン受容体のV1aR1とV1aR2の各ノックアウトメダカを交配して両受容体をダブルノックアウトしたV1aR-dKOメダカの作成とその表現型の解析を行った。両受容体はメダカの鰓に高発現していること、先行研究により鰓でのCl-輸送にバソトシンが作用することが報告されていることから、鰓の機能に対するバソトシン-V1aR系の関与について調べた。野生型メダカ(WT)とV1aR1-dKOメダカの両群の鰓において発現する遺伝子をRNA-seq解析により網羅的に調べ、それらの発現量を両群間で比較することで、V1aR1およびV1aR2の機能喪失によって発現が変動する遺伝子の探索を試みた。RNA-seqによる発現比較解析において、まず、WTメダカでの発現量が高く、V1aR1/V1aR2-dKOメダカでその発現量が1/2以下に低下している15の遺伝子を候補遺伝子として絞り込んだ。さらに定量的real-time PCRによって詳細な発現比較解析を行った結果、予想に反して、浸透圧調節に関連する遺伝子では無く、上皮での免疫機能の調節に働くと考えられているbcl2-like protein 12(BCL2L12)とcapicua transcriptional repressor(CIC)のmRNA発現量がV1aR-dKOメダカで有意に低下していることが示された。哺乳類において、BCL2L12とCICは免疫機能の調節に関与していることが示唆されており、本研究の結果はメダカの鰓上皮での免疫機能の調節にバソトシン-V1aR系が関与している可能性を示唆している。今後は、バソトシンや上記免疫系遺伝子が病原体やストレスに対する免疫応答として発現変化を示すのかや、どの細胞に局在するのかについて詳細に調べる必要がある。
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