本研究により、最も原始的な脊椎動物の一群である無顎類の中でも、甲状腺ホルモン前駆体として、ヤツメウナギ類から哺乳類へと引き継がれるサイログロブリンとヌタウナギに認められるヨウ素化タンパク質 (HIP)が使用されていることが推察され、脊椎動物が進化する初期段階で少なくとも2種類の甲状腺ホルモン前駆体が選択された証拠の一端が得られた。また、本研究では、HIPを中心とした下垂体-甲状腺系の分子機構や無脊椎動物から脊椎動物に及ぶ下垂体-甲状腺/生殖腺系の進化様式のシナリオを推察したが、これらは脊椎動物の内分泌系の進化を理解する上で意義深く、比較内分泌学あるいは基礎内分泌学において重要な知見となる。
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