研究課題/領域番号 |
17K07470
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研究機関 | 岡山大学 |
研究代表者 |
高橋 純夫 岡山大学, 自然科学研究科, 教授 (90144807)
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研究分担者 |
相澤 清香 岡山大学, 自然科学研究科, 特別契約職員(助教) (90754375)
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研究期間 (年度) |
2017-04-01 – 2020-03-31
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キーワード | カリクレイン / セリンプロテアーゼ / エストロゲン / インスリン様成長因子結合タンパク質 / プロモーター / 受容体 / 子宮 / マウス |
研究実績の概要 |
エストロゲンやインスリン様成長因子1(IGF1)によるマウス子宮内膜細胞の増殖制御におけるセリンプロテアーゼKallikrein1(Klk1)の役割を解析し,Klk1と細胞増殖や発ガンとの関係を解明することを目的とした。エストロゲン投与により,マウス子宮内膜において,Klk1は子宮内膜上皮細胞や子宮腺上皮細胞に発現することを免疫組織化学的に明らかにした。子宮内膜間質細におけるKlk1タンパク質の発現は検出できなかったが,RT-PCRによりKlk1 mRNAの発現や,培養液中へのKlk1分泌が検出できた。したがって,エストロゲンにより子宮内膜細胞においてKLk1 発現が促進されることがわかった。 マウスKlk1遺伝子の転写制御機構を調べるために,Klk1遺伝子のコーディング領域の5'上流のDNA領域をルシフェラーセリポーターベクターに組込み,プロモーター活性を解析した。ミニマムプロモーター領域の5'上流は,-136から-87の間にあることを明らかにするとともに,エストロゲン応答領域を含む5'上流のDNA領域を明らかにした。Estradiol-17beta とともにTamoxifenの投与によってもプロモーター活性が上昇したので,エストロゲン受容体はAP-1サイトを介して,Klk1遺伝子の転写制御を行っていることを示唆した。 マウス子宮内膜間質細胞は,エストロゲンによりKlk1を分泌するが,細胞外で基質と考えられるIGF結合タンパク質3 (IGFBP3)を分解するのか不明である。そこで,子宮内膜間質細胞培養系において,エストロゲンによるIGFBP3の分解について解析した。エストロゲン投与により,培養液中のIGFBP3の発現は低下することを明らかにした。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
平成29年度は,マウス子宮内膜におけるKlk1発現細胞を同定でき,Klk1遺伝子のプロモーターの機能的解析により,転写制御機構の解析の基本的データを得ることができた。さらに,子宮内膜細胞からのKlk1の分泌を検出でき,Klk1の機能解析が可能であることがわかり,当初の研究計画をおおむね実施することができた。Klk1転写制御において,エストロゲン受容体がAP-1サイトを介する可能性を示唆できたのは,おおきな成果である。しかしながらKlk1遺伝子の5'上流領域にはAP-1サイトが複数あるので,エストロゲン受容体の作用部位としてのAP-1 サイトの確定と,エストロゲン受容体と相互作用するcoactivatorの種類は未解明である。 子宮内膜間質細胞のcondition mediumを用いた,Klk1作用の生化学的解析を予定していたが,Klk1の酵素活性の解析が進んでいない。今後は,分泌されたKlk1の生化学的解析を実施する。
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今後の研究の推進方策 |
平成29年度の研究に引き続き,Klk1遺伝子の転写制御機構について,エストロゲン作用に着目してプロモーター機能解析をおこなう。Klk1遺伝子の5'上流領域にはAP-1サイトのうち,エストロゲン受容体の作用部位としてのAP-1 サイトの確定と,エストロゲン受容体と相互作用するcoactivatorの種類の同定を免疫沈降とウェスタンブロットにより行う。さらに,子宮内膜細胞を用いて分泌されたKlk1の酵素活性について解析をおこなう。特にKlk1のセリンプロテアーゼ活性の阻害剤や,Klk1発現を阻害したときのIGFBP3量を解析し,Klk1とIGFBP3発現の関係を解析する。 Klk1によりIGF1の作用が増強されていることを解析する必要があるので,解析法を立案し実施する。
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次年度使用額が生じた理由 |
おおむね研究計画が順調に進み,予定していた実験動物の購入が必要でなくなったために,次年度使用額が生じた。なお,免疫沈降とウェスタンブロット解析ならびに,Klk1の酵素活性を検出するために,抗Klk1の抗体を購入する必要が生じたので,次年度使用額をそれに充当する計画である。
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