研究課題
鳥類の羽は哺乳類の毛と同様に,ケラチンを産生・蓄積した表皮細胞の死細胞で構成された皮膚付属器である。ニワトリでは,鞍部に生じる羽(鞍羽)に顕著な性差が見られ,雌では褐色(ユーメラニン色)を呈する丸型の覆羽であるのに対し,雄の羽は光沢のある赤褐色(フェオメラニン色)の尖形飾り羽であり,その先端部には小羽枝を欠くフリンジ構造がみられる。本研究はこの鞍羽をモデル系として用い,皮膚付属器の性差形成の分子機構の解明を目的とした。我々のこれまでの研究により,雌雄共通なデフォルトとしての雄型羽形成には,3型脱ヨウ素酵素(DIO3)とアグーチシグナルタンパク(ASIP)の高発現が関与し,雌型羽は卵巣由来のエストラジオール17β(E2)が,これらの発現を抑制することで形成されること,さらに,E2はDIO3の発現抑制を介して活性型甲状腺ホルモン(TH)の局所的な濃度上昇を起こし,雌型羽形成における小羽枝形成とメラノコルチンの発現亢進に導くことが示唆されている。本年度は,前年度の結果,すなわちフェオメラニンとユーメラニンが1つのメラノサイトによって産生されるという哺乳類メラノサイトとは異なり,異なる2種類のメラノサイトによってそれぞれが産生される可能性が示唆されたことを受け,ニワトリのユーメラニンのみを産生するメラノサイトとフェオメラニンのみを産生するメラノサイトの純粋培養を行い,RNA-seq解析を行った。その結果,メラニン合成やメラノソーム輸送に関わる主要遺伝子として哺乳類で同定されている遺伝子群の発現が確認されるとともに,収斂進化と考えられる遺伝子の発現も見出された。さらに,フェオメラニン産生メラノサイトがユーメラニンを産生しなくなる可能性を示唆する遺伝子発現の変化が検出された。これらの結果は更なる詳細な発現解析を必要とするが,体色発現の進化を考える上で重要な知見となると考えられる。
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